156 / 167
勝利の晩餐
「問題は……ありませんが、ディディエあなたは納得しているのですか?」
今度は矛先が僕に向けられる。
愛していると、側で生きていくと言ってしまった手前、引けなくなっている。
それに、もう、引く気もない。
僕は決めたのだから、それに、シャルールが側にいてくれる。
「僕は、シャルール……様と、生きていく覚悟です」
顔を上げてイグニスに言うと、「俺も聞きたい」とシャルールが横から顔を覗き込む。
「そんなことは他所でやってください」
シャルールは頷いてソファーに背中を預けたが、「仕度は早々に頼むぞ」と言った。
「仕度と言われましても、半年先……」
「そんなにか?」
シャルールが慌てて身を起こした。
「国王の結婚をそんな早急にできるわけがないでしょうっ」
シャルールは声を荒らげる。
「え、結婚?」
びっくりして声を出すと、「側にいるとは永久に夫婦になることだぞ?」とシャルールに聞かれて、「分かっていますっ」と言い返した。
いくら僕が幼く見えても、求婚が結婚を意味していることぐらい分かっている。
ただ、『結婚』とはっきり明言されて、『国王の結婚』と言われて驚いただけだ。
「こんな幼い相手に大丈夫か?」
ヴァレンはあきれたように笑ったが、「落ち着きのないお前よりよっぽど大人だ」とイグニスが言い返した。
「若年寄のお前に言われたくない」
ヴァレンも言い返すが、「お前らだって、ディディエと同じ歳だったじゃないか」とシャルールが割って入る。
「若気の至りです」
イグニスが言い返すが、「何だ、過ちだったのか?」とヴァレンが言うと、「過ち以外の何だと言うんですか。あなたは、私よりも村に帰ることを選んではないですか」と言い返した。
「それはお前が、シャルを優先しているからだろうが。俺は、ついて来いと言ったはずだぞ」
「そんなに簡単に着いて行けるわけがないでしょうっ。私は、シャルの側仕えなのですよ」
「それでも俺はお前のために国王兵団医を辞めた」
ヴァレンは怒ったように言うとイグニスと反対の窓の方に視線を向けた。
「私は辞めてくれなんて頼んでない」
「だったらなんで婚姻届けに判を押したんだ」
…………。
この二人が結婚?
ともだちにシェアしよう!