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勝利の晩餐

 だから、国王になる前にと、僕に膝を着いて求婚したんだ。 「お前の為なら俺はいくらでも膝を汚す。何度でも求婚する。俺の物になり、俺の側にいてくれディディエ」  手を引かれてソファーから立ち上がる。膝まずいたシャルールを見下ろす。  こんなに熱く見つめられて、心は落ち着かない。  涙が溢れそうになる。 「シャルール……」  握られた手にシャルールがその熱い唇を押し付ける。 「僕は、シャルールと生きていく。シャルールを愛してる」  ぎゅとその頭を胸に抱きしめた。赤い髪に顔を埋める。 「ディディエ」  腰に両手を回したシャルールに強く抱きしめられる。薄い寝巻の生地を通して、シャルールの高い体温を意識してしまう。顔を上げたシャルールに見つめられて、恥ずかしいのにその美貌と赤い瞳に目をそらすことができない。  腰に回された片方の手が、僕の頬を撫でて、首の後ろに回り、引き寄せられる。  近づかれることに目を閉じた。シャルールの温かい唇が唇を覆って、ゆっくりと離れる。  目を開けるとじっと見つめたままのシャルールと目が合う。 「俺も、愛している」  シャルールの甘い声音がさらに艶を帯びている。 「この命を投げ打ってでもお前を助けたいと思ったのだ」  致命傷を受けたのは僕を助けるためだった。 「だが、助けられたのは俺の方だ。俺は火、お前は水。俺が暴走しそうになったら、お前が止めてくれ」  再び口づけて、「この国を、お前に守ってほしい」と続けた。 「僕で役に立てるのなら」  僕にしかできないこと。  苦しみを知っている僕だからこそ、差し伸べることができることがある。  僕だからこそできること。  生きること。 「……シャルール」  呼びかけると、再び口づけられる。立ち上がったシャルールが上から口づけをして、熱いと感じた時には、口内に舌が入り込み、深く、口づけられていた。  抱き合ったまま口づけをされて、器用なシャルールの手が寝巻の合わせの結び目を解いてしまう。前の合わせを両側解かれて、シャルールの手が直に肌に触れる。  口づけに翻弄されて、その手が官能を呼び、身体は熱く思考が回らなくなってくる。  シャルールの胸に置いていた手は肩に捕まって崩れ落ちないように、身体を支えていた。

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