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勝利の晩餐
明かりの落とされた部屋。シャルールが指先から小さな炎を作り出して、それを蝶へと変える。フワフワと飛んだ蝶がベッドサイドのランプの明かりに変わった。
「シャルール様の蝶はとても美しいですね」
シャルールと同じようにシャージュも蝶を作り出すことができる。だけど、良く目だろうか、シャルールの蝶が美しく見える。
「お前が褒めると嬉しいものだ」
シャルールが幾つもの炎で蝶を作り出して飛ばした。天井に届くより先にその蝶は儚く消える。
炎によって照らされるシャルールの瞳は同じ赤だが、色濃く美しい。
「失うことが怖かった」
シャルールが切られ、倒れた時、僕は失うことを恐れた。そして龍神の杜人となった。
「この力を手に入れたのはあなたのため。僕が守りたいと、助けてほしいと願ったから……」
シャルールの赤い瞳に手を伸ばし、頬を両手で挟んだ。シャルールは何も言わずに見つめている。
「愛したいと、側で生きたいと、強く、強く、願いました」
この戦いを終わらせてほしい。
助けてほしいと願った。
そして、シャルールは戻ってきてくれた。
「もう、離れたくはありません」
「ああ」
シャルールが自分の頬に添えられた僕の手を握りしめる。
「お前がいなければ俺はあのまま焼け死んでいただろう。お前が繋ぎ止めたんだ。お前のおかげで俺は生きている。これから先も、お前を手放す気はない」
シャルールが口付けをする。
熱い舌が口内に滑り込んで逃げる舌を絡め取る。握りしめられた手を背中に回すように促されて、シャルールの首に両手を回した。
口づけは唇だけじゃない。頬をついばみ、首、肩へと移動する。
「ん……」
シャルールの熱い手が裸の胸を撫でて、白い肌に映える桃色の乳首に触れた。
「やっと、肌を見せたな」
頑なに脱ぐことを拒んでいた。それは幼い時から言いつけられていたから。
「傷が、あったのです」
奴隷印だけじゃない、鱗の模様が背中の一部にはあったのだ。それを人に見せてはいけないときつく言われていたから。
それは龍神の杜人の末裔の証だったのだ。
色濃く血を受け継いだものにだけ現れる印。
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