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魔性

目が覚めると少年は調教師に抱かれて眠っていた。 身体は綺麗にされ、違和感のある2つの穴やペニスに、何かが塗られているのがわかる。 恐らく薬だ。 商品だから。 壊さないはず。 少年は恋人のように自分を抱きしめる調教師を見上げた。 胸に抱かれていたから。 美しい男だった。 逞しい身体に整った顔。 女相手の売れっ子男娼だと言われても驚かないだろう。 この男になら女でも男でも、抱かれたくなる。 泣いた。 身体を拓かれて。 そして、無理やり心をこじ開けられた。 何故か、信頼してしまっていた。 それもこの男の手管なのだ。 少年達はこの男を愛して、調教されつくし、男は仕事として娼館に少年達を納品するのだ。 そこで傷つき、立ち直るために男娼になる。 そこまでが手口なのに。 知ってるのに。 でも。 ダメだ。 少年は男の広い胸に顔を擦り付けた。 縋れるのはこの男しかいないから。 男は少し目をあけて、少年の顎を掴んで顔を、あげさせる。 「もう少し寝てなさい」 優しく言われて、唇に優しいキスをされた。 触れるだけの。 それが生まれて初めてのキスだった。 少年には。 ふるえる程優しい、優しいだけのキス。 そして、背中を撫で雛でも抱くかのように抱きよせる。 その優しさに少年は震えてしまった。 貴族に生まれて。 でもこの身体で。 跡継ぎにはなれないと疎まれて。 でも没落したらこの身体だから売られて。 売られた先で、優しくされただけで、調教師相手なんかにもう恋をしてる。 少年は声を殺して泣いた。 こんなにも他人の思い通りにしかならない自分が嫌で。 こんなにもこの男に惹かれているのが、自分の逃避であることもわかってて。 でも優しく背中を撫でられているうちに、また眠ってしまった。 「この身体にこの気性か」 調教師は眠る少年をみながら呟く。 この自分から絞りとるような淫らな身体に、繊細な心。 一時の恋に自分を騙すことさえできない。 どうすればいい? 壊れるようでは意味がない。 この身体に魔性を育てないと。 壊されるのではなく壊すのだ。 喰らって滅ぼす。 それこそ、調教師が望むものだった。 身体は問題ない。 これだけ淫らなら、テクニックだってすぐに身につける。 必要ないかもしれない。 何しろ。 この自分から搾りとったのだ。 だが。 心は。 さて。 どうするか。 調教師は考えこんでいた。

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