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必要

目が覚めた少年は泣いた。 沢山泣いて、また泣いた。 優しく世話されてまた泣いた。 「お前は完成した。後数日あるが、もうなにもしなくしていい」 調教師は優しく言った。 それにも泣いた。 もう自分は男娼なのだと。 心まで変えられたのだと。 でも泣いたのは自分をそうした酷い男の胸で。 それが心地良かった。 なにもしなくていいと言われたのに、欲しくなった。 もう、次の日から。 ああ、これからずっとしたくてたまらなくなるのだ、と分かった。 二つの穴を埋めたくてだまらなくなるのだと。 そして、それを今求められるのは、自分を深く傷つけた男だけだった。 調教師は優しく世話する以外は触れようともしなかったから、すがりついて、懇願するしかなかった。 「して欲しい」と。 「お前は傷ついた。だからそれを何かで埋めたいだけなんだよ。本当にしたい訳じゃない」 調教師は優しく少年を諭す。 傷つけて完成させはしたが、愛しい作品を必要以上に傷つけたくはなかったのだ。 調教師は誠実だった。 今のその飢えは傷なのだと教えた。 「愛してくれないなら、抱いて!!」 少年が泣く。 泣くから。 調教師は抱いた。 作品としてではなく、恋に破れた少年として。 なぐさめる為だけに。 傷つけたのは調教師なのだけど。 優しいキスと、優しいセックス。 どこまでも優しいソレに少年は溺れた。 もの足りないくらいの優しいソレが、少年を癒す。 我儘に振る舞う 「舐めて・・・後ろの穴も女の穴も」 強請る。 調教師はそうしてやった。 望むように。 穴を舐めてイカせてやった。 まるで調教師が男娼のように奉仕した。 「何でも言え、何でも」 後ろの穴も、女の穴もおなじくらい可愛がってやりながら調教師は言った。 女の穴はキツくて気持ちよく欲しがる我儘な穴で、後ろの穴は複雑に絡みつき欲しがる我儘な穴だった。 どちらも淫らに完成していた。 女の穴をたっぷり満足させてやり、後しろの穴も虐めてやった。 「僕は・・・男?」 少年が聞く。 女の穴を穿たれながら。 「ああ、この穴は気持ちいいが、お前はちゃんと男だよ」 その中で放ちながら調教師は言う。 女のようにイキながら少年はそれを聞く。 「ちゃんと男だよ」 乳首を齧って、鳴かせて、調教師は囁く。 でも ペニスには触らないままで。 もう少年はペニスに触って欲しいとは言わなかった。 触って欲しいともうおもわなかったのだ。 「嘘つき・・・穴で抱かれるオンナだろ、僕は」 少年はそう言って泣いた。 「ああ、でも、ちゃんと男だ」 調教師は子宮近くまで犯しながら言った。 少年は笑って泣いた。 そしてイった。 確かに射精はしていた。 触られなくても穴を犯されたなら射精できる。 でももう、この身体は射精が無くてもイクのだ。 「いつか女を相手にして男だと証明すればいい。お前に抱かれたならお前を女だという女はいない。お前なら男を女にもできるさ。お前に抱かれてお前を女だというモノなどいないはずだ」 調教師は言った。 今度は後ろで深くイかせながら。 本気で言っていた。 犯されることを知りつくしていればこそ、抱くことができるのだ。 「・・・あなたも・・【そう】だった・・の?」 少年はイキながら、尋ねた。 男娼を作りあげられるのは、男娼だけなのではないか。 そう気づいたのだ。 調教師は何も答えなかった。 ただ、少年が欲しがるままに与え続けた。 少年は少年として抱かれた。 調教師はもう何も教えようとはしなかった。 でも、残念ながら調教師は一人の男としては少年を抱かなかった。 調教師は調教師だった。 調教はしていなくても。 「可愛いよ。本当に」 調教師は囁いた。 少年は泣いた。 それは本当だと信じた。 「売られて、弄ばれて泣く人形になるな。喰われるな。喰らうのはお前だ、この穴でな、喰いつくせ」 優しい声で囁かれた。 「自分で自由になれ、食い殺しながら」 その言葉は。 確かに。 愛ではあった。 「あなたの飢えは・・・誰が?」 少年は聞く。 抱くだけで足りるはずがない。 それは少年はもう知っていた。 穴で食いたいはずだ。 調教師は笑った。 そんな心配をした子はいなかった。 「身体の飢えなら大したことないとわかるさ、今に。それより、喰われて傷つけられた心の傷は消えない。喰らいつくせ」 調教師は教えた。 「僕達を・・本当に・・愛してるんだね・・・」 少年は理解した。 調教師は作品達を愛していた。 誰にも傷をつけないために、あえて傷つける。 失恋の傷など、ここから先に少年がいく場所では大したものではないからだ。 少年を生きた人形として貪り喰うことしか考えない連中しかそこにはいないのだ。 「ああ、愛してるよ・・・沢山沢山・・・殺してくれ」 男は少年に囁いてまたその中を満たしてくれた。 引き裂かれ、屈辱にまみれ、犯されたことのある者だけが知る怒りが調教師の声にはあった。 そうさせないために男娼達に兵器としての身体や性技を与え、そうする連中達をほろぼすための呪いであり武器として男娼達を作り上げているのだ。 「愛しているよ、お前達を」 それは確かな声だったから、少年はそれでいいと思った。 「どんなに身体が飢えても、私以外の男とはしたくらないという子もいるからね、飢えは問題じゃない。お前もわかるさ」 そう言いながら、少年の飢えを調教師は満たしてくれるのだ。 女の穴を犯されながら、指で後ろの穴を可愛がられるのは最高だった。 「愛してる」 そう言った。 でももう絶望じゃなかった。 痛みはあったけれど。 「愛してるよ。お前の思う通りではなくても」 調教師は揺すりあげながら言った。 少年はすすり泣いた。 快感のためだけではなく。 「沢山殺して自由になったら、あなたを抱きに来てもいい?」 そう言ったら初めて大声で調教師は笑った。 女の穴に注がれながら、そんなことを言うから。 「そんなことを言った子は初めてだ。そうだね、おいで、その時までに気が変わらなければ」 調教師は面白がり、少年はだからこそ、本気だった。 その日から、娼館に戻される日まで、少年と調教師は、調教ではなく抱き合った。 それが少年には必要だったから。

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