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2.初めまして

「……あれ……?俺、眠ったはずだよな?」 何故か目が覚めてしまったのだが、寝ているベッドの感触が違う気がする。ウチのベッドよりフカフカで、しかもサイズも大きいような……。辺りを見回しても、ベッドがあるだけで薄暗い部屋は全体的にもやっとしている感じがする。ベッドサイドランプに照らされた室内は、俺だけ何だか異世界に飛ばされたみたいで、この空間だけ世界から切り離された特別な空間のようだ。おもわずペタペタと自分の身体を触って、異世界転生していないだろうかと確かめてしまう。 「あぁ、目が覚めたのか?初めまして、と言った方がいいか?」 「……へ?は、初めまして……?何コレ、夢?夢か?」 俺が起きたことに気づいたらしい男の人が側まで寄ってきた。ただ、その男の人の顔が凄く見たことのある顔な気がして……でも、分からなくて首を傾げる。 「そうだな、夢といえば夢だが。願い事しただろ?覚えてる?」 「え、あ、はい、しました、けど……それが何か?」 「それが叶ったんだよ。良かったな?で、俺を見た感想は?」 「へ?そう、言われましても……どこかでお会いしたことありましたっけ?」 今の状況も全く飲み込めていないけど、年齢も近そうなこのお兄さんが他人とは思えなくて。あまり警戒心もなく話せてしまう。俺は夢だと信じ、こういう時は折角だから色々とお話してみようと勇気を出してみる。 「見覚えあると思うけど、分からないか?」 「はい、でもお兄さんカッコイイですよね。何か服装も髪型も決まってるし。イケメンだし、スパダリっぽいというか……」 俺が褒めると、ケラケラと快活に笑ってくれた。ついスパダリなんて言ってしまったけど、通じたのかな?恐る恐る反応を待ってると、気を悪くした感じもなくて、むしろとても楽しそうにしているみたいだった。 お兄さんは、パッと見、焦げ茶の瞳がクリっとしていて童顔っぽいのに堂々としている表情で、とても頼もしい感じに見える。自然な茶の髪の毛もキチンとカットされているし、軽く流してセットしていて大人っぽい。 服装も白のカッターシャツに黒のジーパンというシンプルなものなのに、胸元のボタンが数個外されていて、覗いている胸元が何だか色っぽい。仕草がいちいち決まっているせいか、総合的にカッコイイのだ。これぞ、イケメンなのかもしれない。 「それはどうも。っつーか、本当に分からないもんだな。自分って」 「自分って……え?何?」 俺がキョトンとしていると、お兄さんは悪戯っぽく微笑みかけてくる。なんだろう、この違和感……俺が困って後ずさりすると、ククッとまた笑い始めた。 「だって、お前、サツキだろ?俺はそうだな……リツキってことで」 「はぁ……リツキさん?変わった名前ですね」 「好きだろ?お揃い。アレだ、萌え?名前が月繋がりでお揃いだ」 「え、そうですね、萌えですね。お揃いは」 頷いて同意する。その間にリツキさんは俺の隣へと腰掛ける。というか、なんでこの部屋みたいなところはベッドしかないんだろう?イケメンに隣に座られると落ち着かなくてモジモジしてしまう。 「逃げんなって。でも、確かにこう見ると、なぁ。俺も最初はあり得ないよなって思ってたけど、やっぱり可愛いのかもしれないな」 「可愛い?誰がです?」 「いや、他に誰がいるのか逆に聞きたい」 「は……?え、えぇぇっ!?お、俺?俺ですか!?いやいやいや!何言ってんですか!俺のどこが……」 全力で否定すると、リツキさんがゲラゲラと声を上げて笑う。なんか、笑っても愛嬌があって、本来イケメンは遠くで拝む派の俺も、ビビらずに話せているのが奇跡だ。俺も実在の人物でもオッケー派なので生身のイケメンの掛け算でも普通に萌えられる。別に女の子だって可愛いとは思うけど、俺のような見るからにオタクのような見た目のヤツに近づいてくる訳がないし、特別に話したこともない。 「さて、自己紹介もしたことだし。ココにはベッドしかないんだから、やることは1つ、だろ?」 「やることは1つって、またまた〜。そんな、漫画みたいな展開が……って、そもそもこの状況が夢ですもんね。何か、お願い事したから楽しい夢でも見せてくれてんのかなぁ」 「ホント抜けてるっつーか、何というか。無防備にも程があるというか。なぁサツキ、セックスしよう」 「いやいやそれほどでも……って、あの、今、なんて?」 俺の心臓がバクバクと音を立てている。夢にしても急すぎないか?しかも俺が慌てている間にも、着々とパジャマを脱がされているこの状況。一体どうして、こうなった? 恋愛なんて考えたこともないから、俺は今、大混乱状態だ。

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