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3.気づいた時には※
パジャマの上を脱がされた時に、漸く我に返って両手を突き出した。リツキさんの動きが一旦止まり、何だ?と不満そうに首を傾げた。
「待って!ストップ!その、何でおっぱじめようとしてるんですか?俺、オッケーしてませんよ?」
「そんなこと言って、お前は強引な方が好きなんだから問題ないだろ?こうやって、攻められて、押し倒されて……で、唇を奪われるまでがお前の大好きな展開なんだから」
リツキさんは話しながら俺を押し倒し、問答無用で唇を奪う。眼鏡がリツキさんの額にコツンと当たると、苦笑しながら器用に眼鏡を外して、更に唇を重ね合わせてくる。
「んぅっ、んっ、んーー」
「……ははっ、色気ないな?でも、その感じがまた新鮮?」
器用に唇を少しだけ浮かせて会話されると、吐息があたって擽ったい。ピッタリと合わさる唇が、俺の常識などふっ飛ばしていく。
(あぁ……そう言えば、こういう話、読んだことあった……)
膨大な量のBLの設定が頭を駆け巡る。俺が好きなのは正に、こういう話。最初はその気がなかったはずなのに、甘々に蕩かされて、気づいたら快楽に溺れていく。
(って……ちょっと待て。今、俺がされてるんだっけ?何でだ?)
考えに耽っている間に、舌で唇を舐められた。ザラザラとしているような、しっとりとしているような、よく分からないけど、何か、気持ちいい――
「んむぅ……」
「されたことない割には、反応いいな。これも妄想の為せるワザってとこか?それじゃあ、レベルアップして、ディープなヤツいってみるか」
リツキさんもどこか楽しそうに、俺の唇の隙間から舌を差し入れてくる。ねっとりとしていて、生き物みたいだ。
(うわ、入ってくる……ヤバ、舌、ヤバいって……)
「……ぅ、ん……んん…」
「……フ、素直で可愛い」
可愛いの一言にうっかり反応して、かぁっと顔に血が上る。ホント、俺のどこが可愛いのかさっぱり分からないけどリツキさんはやたらと褒めてくれる。
(俺、男なんだけど。可愛いって言われて嬉しいってどういうこと?)
歯列も丁寧に舐められると、もうどうしていいか分からない。たっぷりと唾液も飲まされて、暫くの間キスを続けられていたせいで、俺の思考能力は著しく低下してしまった。
「んっ、はぁ……」
「どうだ?気持ちいいか?」
「ん……気持ちいい、です。これが、キス?」
「あぁ。サツキ、お前受けの才能あるな。まぁ、自分だったら受けだと思って妄想してたから、合ってるのか」
何でさっきから俺の思考は全て読まれているのだろう?でも、全く嫌じゃない。知らない人に好き勝手されているはずなのに、リツキさんは一体何者?俺が生み出した妄想が具現化したイケメンなんだろうか?はぁ、と息を吐き出して、良く見えない目でリツキさんの観察を試みる。
「そっか、眼鏡ないと見えないのか。じゃあ、近づこうか。この辺で見えるか?」
「あ……はい。見えます、けど……ホント、何でこんなに見覚えがあるんだろう……」
「何でだろうな?サツキ、このまま次に進むから逃げるなよ?」
「ふぇ?次って……まだ、続くの?」
俺の髪を撫でる手付きはとても優しい。こんな人が俺のために優しくしてくれていると思うと、妄想も捗って幸せな気持ちになる。夢でもいい、まだ覚めて欲しくない。一生童貞のまま終わるくらいなら、夢の中で卒業させてくれと切に願う。
童貞のままで魔法使いになるのもいいけど。
俺は今、気持ちよくなりたい。
18禁のBLのカップルのように攻めに愛されて溶かされる、受けになってみたいと思う気持ちの方が大きかった。
「前髪、切っちゃえばいいのに。お前は気づいてないだけで、そこまで顔は悪くないと思うけどな」
「えー。どこがですか。俺はリツキさんとは違いますって」
へらと笑うと、リツキさんがプッと吹き出した。俺が不思議そうな顔をしていることに気づいたのか、コッチの話。と短く言う。
「じゃあ、そろそろ続き。折角だし、丁寧にやっておく?」
「え、あ、うーん……おまかせ、します。実際にするのは、初めてだから……」
「了解」
爽やかな笑みに見惚れていると、首筋にチュッと口付けられる。そのまま吸われて、ピリとした痛みが走った。これこそ俗にいう、キスマークというヤツだろう。
続いて俺の鎖骨にも丁寧に舌を這わせて、チュウっと吸う。実際にされると、痛いけど何だかふわふわする。
「っ……ぁ」
「ん。いい反応。お次はこちらに」
おどけた口調なのに、リツキさんは優しい手付きで俺の薄い胸板に手を這わせる。この展開は……と内心ドキドキとしていた俺はバレバレだったみたいで、キュゥと突起を摘まれた。
「ひゃぅっ!」
「痛かった?でも少しくらい痛いのも好きだよな?」
「あ、あ、あ……そんなに摘んだらちぎれちゃう……うぅっ」
「大丈夫。尖ってきて、美味しそう。イチゴみたいだ」
表現まで恥ずかしくてついていけないけど、妄想の中だけのやり取りを実際にされるのってこんな感じなんだと、改めて思う。漫画やアニメの中の主人公たちはやっぱり別格だ。俺はそんなに色っぽい声も出せないし、なにせ需要がないのだから。
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