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第9話 場を弁えない興奮

 誓将先輩は、照れ隠しの膨れっ面だ。  桃色に染まる頬の上で、動揺に瞳が揺らぐ。  その揺れに触発されるように、俺の中で起き抜けの獣が欠伸(あくび)する。 「嫌ですよ。教えたら自分で拭いちゃうでしょ? キスできないじゃないですか」  もう何もついていない唇に、再び口づけた。  なにかを紡ごうと開いた誓将先輩の口に、ここぞとばかりに舌を捩じ込む。 「ん………っふ…」  甘ったるいチョコの味が俺の舌を擽る。  もっともっと食べたくて、誓将先輩の顎を支えていた手を後頭部へと滑らせた。  公衆の面前だということも忘れ、誓将先輩の唇に夢中になっていく。  甘い甘い誘惑に、溺れていく。  後頭部から耳の下へと滑らせた手で、誓将先輩の顔を固定し、余すところなくその唇を味わう。  腰を這う痺れに、下着の中でむくむくと質量を増す俺の息子。  存在を主張し始めたそれが、狭すぎる空間に痛みを訴えてくる。  痛みを逃がそうと、俺は無意識に股間を(まさぐ)っていた。  俺の胸を押し、ちゅっと音を立て離れた誓将先輩の唇。  落ちた誓将先輩の瞳に、盛り上がる俺の中心部が映る。 「ぁ~……。すいません…」  こんな公共の場所で盛ってしまった自分が、情けなくなる。  3日と空けず、誰かの相手をしていた。  だから、溜まった経験なんてない。  でも、大好きな人に、“他のヤツとはヤるな”と言われてしまえば、我慢するに決まっている。  ただ、こんな格好悪い姿を曝すくらいなら、虚しかろうがなんであろうが、自分の手で処理をしておくべきだったかと、後悔の念が押し寄せる。  場を弁えない興奮を鎮めようと、思わず空を仰いだ。  残りのクレープを口に放り、腰を上げた誓将先輩が、きょろきょろと周りを見回した。  何をしているのかと、空へと投げていた視線を誓将先輩へと戻す俺。  きょとんと見詰める俺の手首が、がっと掴まれ、引かれる。  誓将先輩の勢いに釣られ、腰を上げた俺は、無言で茂みの中へと引きずり込まれた。 「な?」

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