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第14話 反省するのは、俺の方
誓将先輩の嫉妬に、俺の心の端っこが歓喜に揺れる。
ふっと緩んだ心から、小さな笑いが漏れてしまった。
「ははっ………」
力なく嗤った俺に、なにかを吹っ切ったように誓将先輩が吠え始めた。
「ああっ、悪い。悪かったよ。言わないつもりだったのに……っ」
片手で目許を覆った誓将先輩は、疲れたように溜め息を吐く。
「こんなの、うざったいだけだろ……。お前がモテるのは、どうしようもねぇんだよ。オレが、妬こうが妬くまいが関係ねぇ……」
目を覆う手の上にある誓将先輩の眉が、ぐぐっと寄り、その顔が悄気るように俯いた。
「何人もセフレがいるのに風俗に来た時点で、お前の性欲がシャレになんねぇのも知ってんだよ。そこはオレに、どうこうできる問題じゃねぇんだよっ」
俺の下半身のだらしなさは、誰から見ても明らかで。
自分の嫉妬心は、初めから妬くだけ無駄なもので。
何とかしろと俺を責めるのは、お門違いなのだと嘆いてる。
誓将先輩は、色々と間違っている。
間違いは、きちんと正さねば。
1つ目は。
「いや。どうこうできる問題でしょ」
俺の性欲問題なら、誓将先輩が相手をしてくれれば解消できる問題だ。
実質、セフレは全て切ったし、風俗にも行ってない。
今日までちゃんと、我慢できていた。
俯く誓将先輩の前に、しゃがむ。
見上げた誓将先輩の顔は、片手に隠されていて、消化できない嫉妬心と妬くだけ無駄なのだという諦めに歪む眉しか見えなかった。
さらに、俺の言葉が誓将先輩を惑わせる。
気持ちが縺 れているであろう誓将先輩に、2つ目の間違いも指摘する。
「誤解させるような行動を取った俺が悪いんすよ」
誓将先輩に要らぬのヤキモチを妬かせてしまったのは、俺の落ち度だ。
誓将先輩が、謝らなきゃいけないコトなど、なにもない。
反省するのは、俺の方。
「ちゃんと言い訳させて欲しいんですけど。……とりあえず、俺んち、行きません? そのままじゃ帰れないっすよね?」
カピカピになりかけている誓将先輩の浴衣の襟を突っついた。
俺の家は、ここから歩いて5分ほどの距離だった。
顔に飛んだ分は、拭い洗って痕跡は消えた。
でも、浴衣に飛んでしまったものは、軽く拭いたくらいでは落ちず、白いシミが乾き始めていた。
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