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第16話 ヤるのなら、好きな人と

 箱から出したワンピースを広げ、立ち上がった誓将先輩は、身体に当てる。  嬉しそうに弧を描く瞳が、堪らなく可愛らしい。  似合うかと問うように向けられる視線に、俺も笑みを返した。 「これ、着て帰っていいか?」 「もちろんですよ」  俺の粗相のシミがついた浴衣では帰れないだろうと、誕生日には早いが出してきたのだ。  誓将先輩は、申し訳程度の恥じらいを見せる。  俺に背を向け浴衣の帯を外した誓将先輩は、ふわりと浴衣を脱ぎ捨てた。 「な……っ」  露になった誓将先輩の下着姿に目を伏せた。  誓将先輩は、俺の漏れてしまった声に、振り返る。 「なに?」 「な、……なんでそんなエロい下着なんすか」  直視できない(なまめ)かしい姿に、思わず顔を覆った。  誓将先輩が履いていたのは、真っ黒な男性物のTバック。 「あー。ほら浴衣に男物の下着の線出たらなんか萎えんだろ」  ぼそりと放った誓将先輩の気配がゆったりと近づいてくる。  ソファーに座ったままの俺に覆い被さるように身体を寄せた誓将先輩の手が、こんもりと盛り上がってしまった股間を撫で上げる。 「さっきヌいてやったのに、もうこんなかよ」  顔を覆う俺の手を剥がした誓将先輩は、淫靡な空気を侍らせながら、ねっとりと絡みつくような瞳を細め、揶揄ってくる。  首から上はチカちゃんなのに、その下は誓将先輩で、少しばかりの違和感がある。  でも。 「そりゃ、…好きな人が目の前で脱いでるんすよ? それにその下着……、普通に勃つでしょ」  むにゅむにゅと揉みながら、挑戦的な視線で煽ってくる誓将先輩の唇に、ちゅっと軽やかな口づけを返してやる。 「着る前に、ヤるか?」  ムードもなにもない誓将先輩の声色は、まるで、試合でも申し込まれているような気分にさせる。 「服のお礼に抱かれてやるか……とか、思ってます?」  むっとした声を上げる俺に、誓将先輩は小さく笑う。 「思ってねぇよ。……オレが、シてぇの。好きなヤツとシたいって思うの“普通”だろ?」  ぺろりと舐められる唇に、心がぞわりと粟立った。  誓将先輩からのお誘いを断るなんて選択は、俺にはない。  被さっている誓将先輩の腰を抱き、身体を入れ替えた。 「そうっすね。ヤるなら好きな人とっすね」  感情のない肉欲だけのセックスより、好きな気持ちを乗せた、気持ちの籠った交わりがいい。  身体を駆ける快感は同じでも、心を幸せで一杯に出きるのは、やっぱり好きな人とのセックスだから。  誓将先輩の額に唇を落とし、横抱きにかかえ上げる。  こんな狭いソファーでは、誓将先輩を可愛がりきれない。  俺は、広い場所を求め、誓将先輩をベッドの上へと運ぶ。

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