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第22話 どっちが、うざいのか
視界に飛び込んできたのは、全裸で土下座する阿久津の姿。
その横には、こんもりと山になっているシーツであろう物体が置かれていた。
「……なに、してんだ?」
かさかさに掠れた声で、阿久津に問う。
「すいませんでした……」
蚊の鳴くような声で、床に向かって謝る阿久津に、オレの頭には疑問符ばかりが浮かんでくる。
きょとんと呆けているオレに、そろりと頭を上げた阿久津の瞳が、おどおどと見上げてくる。
「気絶させるつもりは、…なかったんすよ? でも、他の誰かとヤってんだろとか、オレ以外にも優しくしてんだろとか……」
むぅっと阿久津の唇が尖り始める。
「悪かったよ。信じた、…ちゃんと綺麗になってるって信じるよ」
オレのがさついた声に、阿久津の顔から不満げな色が消える。
中腰のままに走るように近づいてきた阿久津が、オレの首筋に触れた。
「本当、すいません。抑えられなくて…、抱き潰すつもりじゃなかったんです、マジで……」
カサカサの声を治そうとするように、阿久津の大きな手が、首筋を擦る。
「俺のねちっこいセックス、ウザいっすよねぇ……」
しおしおと肩を落とした阿久津は、頑張って控えます…、と悄気返る。
「別に、うぜぇとか思ってねぇよ……」
触れられる身体も、暴かれる中身も、全てが心地よかった。
ただ、ちょっとはオレの体力を考えて欲しいとは思ったが。
「てか、オレのヤキモチの方がうざってぇだろ」
思わず、片手で顔を覆い、俯いた。
うざったいと感じるのは、阿久津のねちっこいセックスより、オレのくそ重い嫉妬心だ。
上手く蹴散らせないどろどろとした真っ黒な感情が、オレを蝕んだ。
阿久津が悪いわけでもないのに、八つ当たり紛れに苛立ちをぶつけていた。
「オレだって妬きたくねぇんだよ。小せぇのは、見た目だけで充分だろ。心まで狭いって…オレ、最悪じゃねぇか」
はぁあっと、面倒臭い自分に溜め息が出る。
顔を覆っている手を、きゅっと握られ、剥がされた。
持ち上げたオレの瞳に映ったのは、これ以上ないというくらいの阿久津の満面の笑み。
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