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第23話 やっぱりムカつく
「存分に妬いてください。てか、怒って責めて罵ってくれていいです。俺、嬉しいんで。言ったじゃないっすか。誓将先輩なら、束縛されんの満更でもないって」
ふんっと得意気な顔をする阿久津。
「……ドM? 叱られたいとか、痛めつけて欲しいとか…? 残念だけど、そっちの趣味はねぇぞ?」
虐 められて喜ぶタイプだったのかと、驚きが顔に出る。
不意に、晴樹のプレイ動画が脳裏を過った。
「……もしかして、あの晴樹の映像、…お前が通ってたSM倶楽部で貰ってきた、…とか?」
驚きと多少の不快感を滲ませた瞳を向けるオレに、阿久津は全否定する。
「違いますよ。そんな趣味ないっすよ」
オレの手を放ち、慌てるように身体の前で、ぶんぶんと両手を振るう阿久津。
「だよな。お前はMってよりSだよな……」
阿久津に啼かされ、掠れたオレの声。
阿久津に攻められ、軋むオレの身体。
再び、しゅんと肩を落とした阿久津は、申し訳なさげな瞳を向けてくる。
「あの映像は、バーテンの…俺が頭撫でて褒めてやったルカってヤツから、もらったんすよ」
阿久津の手が、柔らかくオレの頭を撫でた。
「ルカも、あのハルキってヤツに風俗に誘われたんだけど、ルカの店に通ってる女王様が、“これで追っ払いなさい”ってくれたらしいです」
頭を撫でられ、尻尾を振っていたバーテンの姿を思い出し、無意識に眉根を寄せていた。
オレの眉間に寄った皺に、阿久津の指先が触れる。
まるで“痛いの痛いの飛んでいけ”と呪 いでもするように、阿久津の指先が眉間の皺を伸ばしにかかる。
「紛らわしい俺の態度が悪いんですから、責めてもらっていいって話で。……あ。勿論、もうルカとそういうコトはしてないっすけど」
情けない笑みを浮かべながら、気の済むまで責めてくれてと乞う阿久津に、オレは重たい息を吐く。
「……もう疑ってねぇよ」
眉間の皺を伸ばし続けている阿久津の手を掴み、口許に運んだ。
やっぱり、誰にでも優しく触れる阿久津のこの手は、腹立つ。
がぶりと阿久津の指先に噛みついてやった。
やんわりと噛まれる指先に、阿久津は瞬きを繰り返す。
「疑ってはねぇよ。でも、なんかムカつく。オレ以外に優しくするこの手、なんかムカつく」
腹立たしさに、もう一度、がぶりと噛みついた。
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