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かごめかごめ
まだ朝晩は寒さが残る春。5月に入ったばかりの日。1人のOLが殺された。
山口裕子19歳。OLという肩書きにはなるものの、この春就職したばかりのまだ十代の女子。女性というには子供っぽく、子供とは呼べない、そんな年齢。
被害者は高卒でアパレル企業のマネキンとして働いていたようだ。
慣れないパンプスを履いた足に出来た靴擦れ。それ以外なんの変哲もない、どこにでもいるような19歳の女の子だった。
生存時の写真では。
死体として見つかった彼女は酷い有り様だった。顔はまだ判別出来るものの、上半身無数に刺され、何ヵ所刺されたのかパッと見全く分からない状態だったらしい。所謂滅多刺し。何ヵ所刺されようと死んでいるものは死んでいる。
惨たらしいかそうでないか程度の違いしかない。
ニュースではそんなに事細かには話さない。
氏名、年齢、生別。通り魔か知人による怨恨かの線で捜査を始めるんだろうな、感想としてはその程度。普段ならその程度で通りすぎてく事件のはずだったんだよな。
寮の食堂、朝の番組で皆ただ朝食をとりながら時計代わりにニュース番組かけて見てるくらいの高校男子寮の食堂。
惨たらしいなとは思うものの、チラッと見たぐらいで忘れていくだろう事件。
その死体が知人だと知った俺とあいつにとっては、1日モヤつかせるには十分な事件だった。
知人だった死体になったものとでも言うべきか?
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