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伊藤蒼(あおい)①
モヤモヤと授業をこなしてぼんやり考えたりして気がつけば放課後になり、寮の部屋に戻った。
昼飯、何食ったっけ?
いつもの優等生の仮面は被れてたか?
誰にでも敬語のスタンスは崩さなかったか?
自分で出した答えは、『まぁいつも通り出来ただろう』だった。
山口裕子、ゆうこねぇ何で殺されたんだろ。ねぇってのはお姉さんの略だ。
オレたちが育った児童養護施設では、それが普通の呼び方だったから、みんなと同じようにゆうこねぇと呼んでいた。今になって呼称つけるなら『クソ女』だな。
あいつ、誰かに恨まれてたのかな。一番恨みあるとしたら…………………オレじゃね?オレがやったんだったりして。二重人格とか。表のオレが寝てるうちに裏のオレが現れて?そういう場合って、オレの睡眠時間て足りてんの?
ごちゃごちゃとベッドの上で転がり考えてたら同室のやつが帰ってきた。
こいつも同じ。オレと同じ児童養護施設から特待生でここに通ってるやつ。
「よぉ早かったな」
「なんか…警察の人が来てるとかで自主練だけになったから…。走り込みだけして終わりにしたんだ」
警察。タイムリーな言葉に、ゆうこねぇが殺された公園がここから近いのかとふと思う。
「なぁ、なおき。ゆうこねぇなんで殺されたんだろうな」
「…知らない。通り魔かなんかじゃないの?」
「通り魔があんなに刺すかよ。恨みでもなきゃ滅多刺しなんてしないだろ」
「そんなもんかな」
「そんなもんだと思うぜ」
あいつが死んだ。殺された。ニュースを見てから摩訶不思議状態だったが、今となっては妙な高揚感があった。
オレにも一刺しさせてほしかったぜ。
高揚感はあちらの方も元気にさせる効果があるらしい。
「直樹、バスルーム行こうぜ」
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