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蒼②

 バスルームに誘われるのは、蒼がオレを抱く時だった。  この寮は、寮生が入れる大浴場がある。それとは別に各部屋、大抵二人部屋に簡素なシャワールームがある。  もちろん1人で入るのを想定して作られているから、簡素なシャワーがあって、ボディソープやらシャンプーを置く場所があって、人一人が体を洗うスペース程度はある場所。  二人で入っていって行為をするのには、そこまで拘らなければ十分なスペースだと思う。床が痛いから風呂マットは買ったけど、風呂マットくらいあってもおかしくないからな。  蒼は俺を抱いて、いつも汚いものを洗い流すかのように二人分の体液を排水溝に流す。    「シーツも汚れないし、体もすぐ流せる。うってつけの場所だろ?」って言うけれど、俺との行為もその都度どこかに流してるみたいで、正直良い感じはしない。  無理やり抱かれてるのかって?違う。これは、蒼を見捨てたおれの罰だから。蒼が許してくれるまで、抱かれ続けるつもり。    蒼はおれを抱いて、体液を出して流したいんだろうな。  おれとの行為も、こうなってしまったキッカケの出来事も、その後受けた扱いも。全部全部流したいんだと思う。  全部全部蒼とおれが吐き出した体液と一緒に排水溝に流れていっていって、小さな藻屑のように海に溶けてしまえばいい。  そしたら蒼は楽に生きられる?  記憶も流さないとダメだな。  記憶も体液も全部全部流れていけば、元の世話焼きなしっかり者の明るい蒼に戻るのかな。  時間が巻き戻せれば良いのに。  巻き戻せるものならば、あの公園。いや違う、もっと前。そうだな、蒼が母親に施設に連れてこられた時に戻せればいい。  どうにか蒼の母親に思い止まってほしい。蒼の母親に、ここに預けたら蒼くんは嫌な目にあうばかりですって話して止めるんだ。  戻せるもんならばの話で、おれに時間を戻す能力なんてない。  ファンタジー小説じゃあるまいし。

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