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かごめかごめ
かぁごの中の鳥は。
蒼は面倒見が良かった。そうなったのは母親がいつまでたっても迎えに来なく、園に慣れたからだ。園に慣れるまで、最初に出来た友達が直樹だった。
置いてかれた次の日から園の入口に座り外を見る蒼の隣に何も話さず座ってくれたのが直樹だった。直樹は毎日隣にいてくれた。
来ると思ってた母と兄が来なく、とうとう蒼が泣き出した。
「ママと兄ちゃんはいつ来るのかな」
直樹はよしよしと蒼の頭を撫でた。何も喋らないまま、蒼が泣きやむまでずっとずっと撫で続けた。
泣きやんだ蒼にやっと直樹が話しかけてきた。
「あおちゃん、一緒に遊ぼう」
「……うん!」
初めて喋った直樹にポカーンとした蒼だったが、すぐさま園の中で遊びだした。言葉には出さなかったけど、ママと兄ちゃんが来るまではここで待とう。幼心にそう思った瞬間だった。
いつまで待っても迎えは来ず、徐々に年下の者が増えていった。
蒼のキレイな茶色の髪も、声をかければ遊んでくれるところも、幼い子供たちの注目を集めていて「あおちゃ、あとぼぉ」と寄ってくる年下の子供が多かった。みんな直樹の呼び方を真似て『あおちゃん』と呼ぶようになっていた。
そして、5年生の夏の日。あれは夏休み中の出来事だった。愛育園にはクーラーがなく、日々の猛暑に疲れていた蒼と直樹は図書館という居心地の良い場所を見つけ、毎日昼間は図書館で過ごしていた。
夕飯を並べる役割もあるから、夕方には帰る。
帰る頃には日差しも少し落ち着いてきていた。
園が近づいてきた公園では、園の子達が遊んでいた。皆、公園の水道で水分を補給し、日陰が欲しくなると土管の中にタオルを敷いて過ごしていたらしい。
「あおちゃんお帰り!夕飯までまだあるから、かごめかごめしようよ」
蒼になついている5歳年下のみきが、蒼の手にぶら下がって遊ぼうと言い出した。
幼稚園年長さんのみきは多少おませだが、まだまだ提案が可愛らしい。
「もうすぐ時間だから少しだけだぞ」
「うん!」
嬉しそうなみきの声とともに、近づいてくる他の子供たち。
かぁごめかごめ。
かぁごのなかのとりは。
いついつでやる。
よあけのばんに
つるとかめとすべった
うしろのしょうめんだぁれ。
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