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舘脇さん
直樹は走った。闇雲に走り回ってもしょうがないことは分かっていたから、まずはあのおじさんが持ってた地図の友人宅という場所に向かった。ちょうど図書館に行く時に目立つその家は純日本家屋という感じで、あおちゃんと話してて話題になったこともある大きな家だった。
出来るだけ速く速く走って足がもつれそうにもなった。途中お腹の虫が鳴く音も聞こえたけれど、もちろん自分のお腹の虫よりも、あおちゃんが大事で心配だった。
門があり、玄関までは置き石がしてあるその家屋。門の所には舘脇という表札が出ていた。
インターホンを押すとすぐに男の人、若くはなさそうなお年寄りらしき声がした。
「はい?」
相手は子供の姿をモニターで確認し不思議に思ったのだろう。
「あの、、、すみませんが、僕の友達が道を訊かれて、その方の目的地がここのおうちだったのですが、訪ねてきてませんか?」
「今日の話かい?今日は誰も訪ねてきてないよ」
唯一の手がかりを無くしてはいけないとばかりに話を続けた。
「あの、僕も一緒に地図を見たんですけど、確かにこのおうちだったんです。僕とあおちゃん…その友達の名前なんですけど、蒼くんといつも図書館に行く時に通る道だから、あおちゃんも間違うはずないんです」
ぶつっとインターホンの切れる音がした。
訪ねて来てないと言うなら、次は公園に戻ってみようかと、歩きだした時、門が開いた。
「いたずらの類いではないようだな。嘘はついてない、本当に友達を心配してる顔をしている」
中から先ほどインターホン越しに話した、その声の主が出てきた。この日本家屋に似合った和装をし、頭には白髪がたくさん混じってグレー色に見えた。
「君の友達が道を訊かれた場所はどこだったんだい?」
「そこの公園です。僕たち何人かで遊んでて、そのおじさんに話しかけられたんですけど、その中であおちゃんが行くから僕は小さい子達連れて先帰っててって言われて、それで、帰ったんだけど、あおちゃんなかなか帰って来なくて……」
簡単に事情を説明していると、どんどん不安が押し寄せてきて、気がついたら泣き声になっていた。
「話しかけられた場所が公園だと?そのおじさんていうのは20~30代の男か?」
「うっ、多分、おじさんていうには若いかなと思ったから…そのくらいだと思います!」
「公園に急ごう。私も一緒に行くから」
言うや否や舘脇さんは先に走り出した。さっきも走って疲れ気味だったけど、置いていかれないように、一生懸命舘脇さんの後ろ姿を見ながら追った。
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