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 やや早足であおいくんを背負ったまま家へ急いでいると、彼が目を覚ましたようだった。   「…ん~。あれ?ここは?」 目を覚ますと知らないおじさんにおんぶされている状態では、先ほどの事を思いだし恐怖だろう。 「もしかして、助けてくれたんですか?」 さて、なんと声をかけようかと悩んでいたら、彼が自分から声を発してくれた。    「あっ、直樹も隣歩いてる。大人の人呼んで来てくれたんだね。ありがとう。僕重いんでおります、歩きます」 「君はおんぶしていても重くないから、もうすぐ私の家だからこのままでいいよ。ケガもしてるしね」 「あっ…あの、あなたの服の僕の血が…」 見なくても分かる。多分、あおいくんの頬やら首につけられていた傷からの血が私の服に付いたんだろう。 「気にしなくていいよ。今気にすべきなの君の傷の方だ」 体の傷と心の傷のね。 「あっ、あり、ありがとうござ、います…」 あまり大人に優しくされた事がないんだろうか、酷く緊張してるんだか照れた様子でお礼を言われた。可哀想に。我が家には手伝いで、週三回ほど掃除と料理をしに来てくれる、所謂お手伝いさんがいる。50代の彼女がいれば、怪我の様子を見てもらいやすかったが、生憎夜のこの時間ならもう帰ってもらっている時間だった。  だからなおきくんが訪ねてきた時も私が対応したのだ。  家の門をくぐり、先ほど鍵をかけていかなかった玄関を開ける。どの部屋ならば手当てしやすくてこの子が緊張しなくて済むのか。分からなくて、とりあえず洗面室も近くにあるリビングのソファーに横になってもらう。 普段そんなに使わない救急箱だが、置き薬屋が定期的に来て中身を確認、揃えていってくれるので、消毒とガーゼくらいあるだろう。  慌てた様子で家中を駆けまわる私にあおいくんから声がかかった。 「そんなに慌てなくても、僕もう大丈夫ですよ。頬の手当てだけさせてもらえれば」  なんでこの子は平気な顔をして見せるんだ。怖い思いをしたのに自分なのに。他人に気を使うことなく自分の事だけ考えてれば良い時に。隣にいるなおきくんの方がオロオロと落ち着かなくしているではないか。 「話を聞いてから警察や病院に行くかは判断する。なおきくんにいてもらっても大丈夫かい?」 「あっ……ちょっと…」 「なおきくん、隣の部屋が応接室になっているから、そちらでテレビでも点けて見ていてくれないかな?」 「分かりました」  なおきくんはすんなり出ていってくれた。さて、問題はこの子だ。 「さて、傷は顔と首だけかな?」 救急箱を持って近づくと、さっきまでと違った様子に戸惑った。  あおいくんは、泣いていた。声を出さないように。友達の手前、我慢していたのだろうか。友達がいなくなっても尚、声を出して泣くのは我慢している。  

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