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新しい生活
新しい生活。新しい家。新しい自分だけの広い部屋。部屋にはクローゼットっていう、洋服を入れるための場所があって、俺の為だけの服が沢山入ってた。
シャツとかニットのベスト、半ズボンが多くて、いかにもお坊っちゃまって感じの服が多くて、駆け回ったり遊ぶには不便だな、でも折角用意してくれたしなって、用意してくれたことに対して感謝する気持ちはあった。
新しい家から通うのに、今までの学校じゃなく制服のある小学校に転入することになってたから、学校用の制服も同じように、シャツとネクタイとスラックスだった。スラックスは長いのと半ズボンタイプが選べて、半ズボンの方が似合うよ、子供らしくていいよとお義父さんがしきりに誉めてくれたから、半ズボンを履く日を多くした。
お母さんが選ばれたんだから、仲良くしなきゃと思ってたんだ。
新しい学校は、頭の良さそうな子、しっかりした子が多くて、違う学校から来た俺に新鮮な人ばかりだった。
学校の事も教えてくれようと転入初日にはたくさん周りに集まってくれた。
勉強は、前の学校では普通に出来てたけど、こんな制服を着て通うような学校の勉強は難しいのかなって思って、そこは少し心配だった。俺が馬鹿だったら、こうして親切に友達になろうとしてくれる同級生たちが、ガッカリして遠ざかってくかもしれない。
その日のうちにお義父さんに勉強について思ったことを相談してみた。
お義父さんは次の日には手配して、家庭教師をつけてくれた。俺が今通い始めた学校出身の先生で、今は頭の良い人しか行けない大学に通ってるらしい。信用出来るから勉強と、気が向いたらピアノも習うといいよって言われた。ピアノは目も頭も指も使うから、とっても良い習い事なんだよって。
「翠が、音楽が嫌いじゃなかったら習ってみるといい」
この時初めてお義父さんに『翠』って呼び捨てで呼ばれた。
少しだけ、お義父さんとの距離が近くなった気がして嬉しかった。
家庭教師の先生は月曜から土曜毎日来てくれた。教科書を見て、俺にテストのプリントを作ってくれて、テストをした。
丸つけをしながら先生は「このくらい出来るなら、あの学校で大丈夫だよ」って、保証してくれたから、あの学校で浮かなくて済むんだって嬉しかった。
時々、蒼の事を思い出した。
こんな大きな家で、お金持ちのお義父さんなら、蒼1人増えても大丈夫なんじゃないか?
蒼を迎えに行って、一緒に住めるんじゃないか?お母さんに提案してみようと思った。
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