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契約
お母さんは何故か蒼を迎えに行くのはダメだって言うんだ。
それがお義父さんとの契約だからって。
結婚するのは契約が必要なんだな。契約って、約束と同じようなことかな。
全部は教えてあげられないけど、ふよう?するのはお母さんと俺だけって話らしい。お義父さんにとっては俺も蒼も実の子供じゃないもんね。実の子供じゃない俺を育ててくれてるってだけできっと凄いことなんだ。
お母さんはここに来てからしばらくは一緒に行動して、夕飯は三人て事が普通だったけど、いつからか一緒じゃなくなった。
代わりにお義父さんは、時間通り帰れたよって日は必ず一緒に夕飯を食べてくれた。
「翠、学校はどうだい?」「翠、家庭教師の先生は優しいかい?」「翠、今度のお休みはお義父さんと遊ぼうか」
お母さんはいつも仕事で疲れてるか、獣のような声を出してるかで、俺たちに遊ぼうかって言うのは聞いたことはなかった気がする。
お義父さん。お義父さんて存在が出来て良かった。本当なら蒼もいれば最高なのにな。
蒼と二人、お義父さんと一緒にキャンプなんてしたり、サッカーとか相手してもらったり。二人でも楽しいところにお義父さんて大人の人が一人入ってくれれば、もっとずっと楽しいと思うんだ。
* * *
その日もお母さんはいなくて、お義父さんと二人の夕食だった。
お風呂にもお義父さんが入ってきて体を洗ってくれた。大人の人に洗ってもらうのは初めてだ。きっと赤ちゃんの頃はお母さんに洗ってもらってたんだろうなぁと、しばらく顔を見かけてないお母さんを思い出す。
双子だから、お母さん、どうやって二人を洗ってたんだろう。
二人いっぺんに?片方ずつ?聞いてみたいのにお母さんの姿を何日も見てない。
使用人て呼ばれてる人が朝食を用意してくれて、学校に行って、帰ってきて一休みしたら家庭教師の先生が来てくれて勉強して、ピアノの楽譜の読み方を少しずつ習って…。
お母さんはどうしてるんだろう。
その夜。お義父さんが部屋に入ってきた。
「翠、翠はこれからはこれを着て寝るんだよ。翠はお母さんと違ってお利口だからお義父さんの言うことが聞けるよな?」
お義父さんが持ってきたのは、前の学校で女の子が着てるのを見た事があるワンピースって服。それよりもフリフリしていてリボンも付いてて、色は、真っ白だった。
「嫌だよ、こんなの女の子の服だよ」言いかけたけど、お義父さんの言い方と顔を見て、冗談じゃないんだと思った。
着なきゃ何をされるか分からない、怖い、と思った。
いつものお義父さんは何処へ行ったのだろう。
恐ろしくて少し震える指で、着ていたパジャマのボタンを1こずつ外し、ズボンも脱いだ。
「お義父さん、着方が分か、りません」
頭からスポッと服を被せられ首を出すとこから出して、「こうやってから両腕を出せばいいんだ」と教えられ腕を出した。
「思った通りだ。よく似合う」
目の前には満足そうに笑う知らない男の大人の人がいた。
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