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人形

 俺はお義父さんの着せ替え人形になった。小さな人形を着せ替えるのではなく、等身大の子供を着せ替えさせて楽しむお義父さん。    ある時は、シャツに半ズボンにサスペンダー、白い靴下。またある時は女の子しか着ないだろうフリルが沢山、リボンが沢山の様々な色のワンピース。これの時は長い髪のカツラと、髪にリボンもつけられたりした。    段々着せ替え人形の服はエスカレートしてきて、透け透けでフリフリの下着のようなのも着せられた。下着としての役割も果たしてないような服だか布だか。    お義父さんはカメラを持ってきて、いつも俺にポーズを要求した。 「翠、こんな風に座るんだ」 「翠、そこに立ってこちらに振り向いて」 「翠、歯は出さずに笑うんだ」 「次は伏し目がちに」 「次は色っぽく」  要求もエスカレートしていってる気がした。色っぽい表情なんて分からない。困ってそう答えると、ズボンをさげられ、まだ小さい子どもちんちんを取り出し触られた。最初は痛くて顔をしかめたら、お義父さんは力を弱めて優しく触りだした。  それはもぞもぞとしていて、落ち着かなくて、よく分からないけどイケない事をされてる気分だった。  お義父さんとイケない事をするのはダメだろう。でも本当のお父さんではないからいいのかなぁ。 「覚えておくんだよ翠、これが気持ちいいって事で、その時してる表情が色っぽいとか色気がある表情だ」  触られてちんちんがいつもよりおっきくなったまま、下着も下げられたまま、おかしな格好だったのに、お義父さんは夢中になってシャッターを切っていた。こんな格好の写真をプリントされたら恥ずかしい…そんな気持ちで前を隠すと「その恥ずかしそうな仕草と表情もいい。お前は天才だ翠。お義父さんの傑作だ」  すごくすごく誉められた。  誉められて嬉しい気持ちと、着せ替え人形という気持ち悪い事をさせられてるという気持ち。嫌だって言ったら、あの時に見た怖いお義父さんが出てくる気がするから逆らえない。嫌だっていうたった一言を口にするのが怖い。  なんで俺なんだろう。俺じゃなくて葵がこんな目にあうはずだったかもしれないのに。 ここに居たら楽しいと思ってた弟の葵をまた憎み始めてた。八つ当たりなのは分かってる。    葵、どこにいる?幸せなの?楽しいの?俺はお金の不自由はなくなったけど、不自由だよ。  未だにお母さんは見当たらないままなんだ。

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