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 お尻が切れたらしく血が皮膚を伝ってきて生ぬるい。本当ならそんなとこにそんな物は入らないんだから、血ぐらい出るの当たり前だ…と、他人事のように冷静に思った。 「はぁ、はぁ、キツかったけど、血が出てぬるぬる滑るようになったから、動きやすくなった」 「正くん気持ちいい?」 「おぅよ」 「俺も次……ヤってみた……」 「ばぁか!何言ってんだよ!こいつは俺のだって言ったろ」  涙と血とうめき声だけが漏れてくる。張本人抜きにして『俺の』とか勝手なこと言わないでほしい。そんな事言ったらまた殴られるんだろうか。殴られるのは怖い。でもこの行為も怖い。内臓が引っ張られて持っていかれるようだったり、鋭利なもので串刺しにされてるようだったり。  鋭利な物を想像して、昨日の刃物を思いだし吐き気を催す。吐きそうに気持ち悪くなっただけで、「ウッ」って声は出たけど、口からは何も出なかったから良かった。吐いたりしたらまた殴られるのかもしれない。  押さえつけられ、いつ終わるか分からない行為。揺さぶられ続けながら村田正彦のツラそうな声が聞こえてくる。 「なんで、知らないおっさんとかにヤられてんだよ」 「俺のがずっと前から目つけてたのに」 「なんでだよ」 「見てるだけで満足してたのに」 「お前が悪いんだからな。誰にでも親切にするから、そんな目に合うんだ。蒼、お前が悪いんだ」  なんだか勝手な事を言われてるという気持ちにしかならない。村田くんが俺を見てたなんて知らなかった。怖い顔で睨まれてるって思った時はあったけど、あれは睨んでるわけじゃなく見てたの?  そんなの知らない。そうだとしても、こんな事していい言い訳になんかならない。  勝手に俺のせいにするな。  俺が誰にでも親切にしようとしてたのは、良い子にしてたら、お母さんと翠が迎えに来るって信じてたからだ。  でも、良い子にしてても来てくれない。こんな目に合って来てくれない。二人は何をしてるんだろう。俺の事なんて忘れちゃったのかな。  ぼとぼと、ぼとぼと、顔から落ちた涙は床に染みを作る。村田くんの動きが早くなり、うめき声と共に、腹の中に温かいものが出された感触があった。気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。 「お前の血で汚れたんだから舐めてキレイにしろよ」 また昨日と違う人間の、同じモノを舐めなきゃならないなんて…。口を閉じて顔を背けたら、頭上から岡村の手で叩かれた。  両頬を指で潰すように掴まれ、無理やり口を開かせられる。 「ちゃんと舌使って綺麗にしろ」  自分が排泄する場所に入ってたモノを舐めるなんて…。でも舐めなきゃまた殴られる。口は勝手に開けられてる。    開いてる口に無理やり上から突っ込まれたからもう舐めるしかなかった。 「綺麗にするまで終わらないからな。ちゃんと舐めとれよ」  血の味、、鉄の味と村田の出したものが混ざって、このまま吐けてしまえたら、狂ってしまえたらと思った。

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