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蒼、現在

 結果として舘脇さん宅へは、最初は週1で学校の帰りに寄ってた。直樹を巻き込みたくないから、週1どうにか直樹を巻いたり用事があるって言ったり、直樹が他の友達と話すよう仕向けてその間に走って向かったり。直樹は足が速いから、いつ見つかるか冷や冷やだった。  愛育園での生活は変わらず、村田に呼び出されては玩具として扱われ……向こうは俺の事が好きで愛しく思ってくれてるってのは徐々に伝わってはきていたけど、結局暴力に怯えて言いなりになってるだけだから、合意での行為ではなかった。その点に村田が気づいてるのかは分からなかったけれど。  「俺がここを出る時に、蒼もついてこないか?」とか言い出した事もあったから、奴は合意で俺が抱かれてるって、途中から勘違いしてたんだろうなぁ。最初俺の事脅したよな?自分に都合の良い頭してんだろうな~。まだ勉強したいからそれは無理だって断ったら、意外とあっさり引き下がってくれて、それ以降その話題にはならなかったから助かった。  んで、村田に呼ばれた次の日はゆうこねぇが何を仕掛けてくるか分からねーから、大分神経を尖らす生活してたなぁと今なってみると思う。注意してるつもりでもさ、通りすがりに背中に熱いもの押し付けられて火傷したり、、、女の虐めって陰湿なのな。  服着てれば見えない所に傷をつけてくるんだ。村田とヤる時、上は着たままで下だけ脱がされてるのを知ってたとしか思えない。  上半身だけを狙ってくるんだ。  それでさ、そんな傷だらけになっていって、舘脇さんに見せるのはどうなんだ…って思い始めて、段々舘脇さん宅から足が遠退いていったんだ。  あんまりにも酷いなって舘脇さんが思ったら、愛育園に来るかもしれないじゃないか。平和に暮らしてる子供たちはそのまま、ここは平和な所だって思ってて欲しかったし、直樹に心配かけたくなかった。  直樹……直樹の事も自分から遠ざけた。酷い言葉を言って遠ざけた。  その後だって、何度も俺を気遣う素振りで声をかけようとしてくる直樹を無視して、時間が許す限り勉強に時間を使った。   あんまり直樹といて、村田が嫉妬するかもって心配してしまったし、ゆうこねぇに直樹まで攻撃されたら…と考えたら、遠ざけるしか方法が思い付かなかったんだ。  そんな生活をしていったら、段々と俺は『明るくて面倒見の良いあおちゃん』ではなくなって、『一人でいるのが好きで勉強ばかりしている変わり者』になっていった。  園の年下の子達も、いつの間にか俺には声をかけなくなってた。  それで良かったと思ってた。何にも巻き込まれず、俺の事なんて忘れた方がいいよ。

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