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「俺の双子の弟の蒼……だよな?」 前にいた蒼に追いついて、改めて声をかける。   「俺の双子のお兄ちゃんの翠?で合ってるよな」  ニッと笑った顔は、微かに記憶に残る幼き日、二人でいる時によく見た蒼の笑顔だと思った。  堪らない気持ちになって、近づいて両肩に触れる。触れてから恐る恐る抱きしめて、ここが往来であることを思い出し体を反らした。 「蒼……そこが今の俺の家なんだけど、」 「知ってる。調べてみてそうみたいだから見に来たんだ。翠に会えるとは思ってなかったけど」  どうしようか、蒼を迎えることは歓迎されなかったんだから、今家に連れていって話す事も、義父に知られたら嫌がられるのかもしれない。  義父との時間が減った今でも、養われている身からすると義父の機嫌を損ねるのは得策ではない。 「いいよいいよ、顔見られて翠が元気そうなだけでも十分だよ。じゃっ、俺帰るから」  こんな短時間での再会では、後から白昼夢だったのかもしれないと、自分を信じられなくなるかもしれない。それに、もっと蒼と話したい。空白の10年余りもの時間に何があったのか。  なぜ双子なのに俺と蒼の体格はこんなに差があるのか。俺はちゃんと蒼を守っていることになっていたのか…。この辺は打ち解けないと出来ない話だな。  とにかくこの、一時だけ憎んでしまった双子の弟とゆっくり話したい。  あの憎という感情は完全に間違いだったと今思える。  自分と似ているけど違う存在ってのはこうも愛しいものなのか。  自分より小さいからそう思うのかもしれない。  血を分けた、母親の体内では一つだった双子という存在だからそう思えるのかもしれない。 「…蒼。近くに喫茶店があるんだ。帰るのは少し涼んでからでもいいんじゃないか?」  誘うのに緊張して、いつもの優等生顔をしてしまった。弟相手に。変じゃなかったか? 「翠のおごり?なら行ってもいいかな」 「もちろん。慌てて出てきたから財布持ってくる。そこの、公園で待ってて」   走って玄関を開け二階の自室までの階段も駆け上がった。この家でこんなに走ったことはなかったな。いつも行儀を気にし、人の目を気にしていたから。  財布を掴んでまた階段を駆け下り、靴を引っ掛けて走った。多分待っててくれてる。幻ではない俺の双子の弟蒼。  公園に入って探そうとしたのに、蒼は公園の外でフェンスに体を預けるように寄りかかって待っていた。 「おま、たせ…」 「ちょっと公園苦手でさ」

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