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02. パパさんと俺
「おー、アイト似合うぞープックク」
笑いこらえ切れてませんよ、パパさん。
「アイト、きれいー」
あなたの目は節穴ですか、兄よ。
「……似合うわねッフフ」
あなたも笑いこらえ切れてませんよ、ママさん。
俺は今、魚が死んだような目をしているだろう。
元凶はもちろん───
「それにしても、よくこのようなフフ趣向のものをみつけられましたね」
「なーに、ちょっと昔の知り合いに頼んでちょちょいとあつらえてもらったんだ。
それにしても見事に合うようでよかったよかったクク」
よくねえよ!
パパさん、俺、なにが嬉しくてこんな、赤やら青やら紫などの何とも派手派手しいというかケバケバしい花飾りがごてごてとついている度なしのしかもバンド固定式のメガネをかけなきゃいけない目に遭っているのでしょうか?
説明求む。
ことの起こりは一時間前に遡る───
俺は誰も部屋にいないことをいいことに、魔法を使う練習をしていた。
もちろん、まだ喋れないからやっていたのは体内に巡る魔力の流れをつかむ練習である。
後少しというところで、ママさんと兄の大きな歓声が聞こえてきて集中力が切れた。
あとちょっとだったのに……
そして部屋に入ってきたのはママさんと兄と見知らぬイケメン。
「おっ、ちょっと見ぬ間に大きくなったなぁ。
ただいま、アイト」
はい、異世界生活三週間目でようやく出会えたパパさんでした。
パパさんはしなやかな茶色の髪に溌剌とした深緑の瞳のがっしりした体格の美丈夫だった。
パパさんは俺をけんだこのようなものができていて硬い、だが安心させてくれる手で撫でてくれた。
ふみ───、気持ちよさにすっかり油断していた俺はパパさんがこっそり忍ばせていたこのケバケバメガネに気づかなかったのだ。
そして冒頭へ戻る───
「だぁー(怒)」
「……やっぱり嫌がるか。ま、十分可愛い息子を楽しめたし、とってやるから落ち着け。」
まったく、とんだお茶目なパパさんである。
しかしパパさん、立派な体格といい、けんだこのようなものができていてる手といい、商人というより騎士みたいだ。
案外、昔は騎士だったけど、ある深い事情で現在商人みたいな感じなのかもしれない。
ソウェルって家名ももっているしね。
ちなみにパパさんの名はシエロ、ママさんの名はリオ、兄の名はカクト、俺の名は言うまでもないがアイトである。
「カクトお前もつけてみるか?」
「僕はいいよー」
ちっ、兄よ、弟(俺)は犠牲になったのに自分は逃げたのだな……ずるい
それよりパパさん、後で倍返しにしてやるからお楽しみに♪
「ん?なんだか寒気が……さっきまであたたかかったのに…」
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