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03.あなたって人は……
「だうあ───!!」
心臓がバクバクと音を立てている。
深呼吸して辺りをみまわすと、白い見慣れた天井と床に散らばった絵本や玩具が目に映った。
……ああ、俺、体内に巡る魔力の流れをつかもうとして、温かい何かに触れたと思ったら目の奥に火花が散って、体中が熱くなって、気を失ったんだ。
ん、俺、魔力の流れがつかめたのか!?
目を閉じ、意識の最深部へと分け入ると体の中を巡る温かな光の流れにつきあたった。
しかし、流れの原点へむかおうとすると硬い鉄のような壁にぶつかる。
けんめいにやぶろうとしても壁はびくともせず
意識の表面へと押し戻されてしまう。
くそー、ダメか、つかんだと思ったのになー
窓に目をやると、差し込んでくる明るい光からまだそんなに時間が経っていないことがわかる。
それにしても、大事な夢をみてた気がするんだけど、どんな夢だっけ?
いろいろ疲れを感じながらも、頭をひねる。
と、バタンと勢いよくドアが開いた。
「アイト、どうした-?
……って、なにお前、背中から哀愁を漂わせているんだ!?
俺の可愛い息子は赤ん坊にして、人生に疲れたおっさんとなったのか」
う・る・さ・い・よ、パ・パ・さ・ん♡
こちとら、約二カ月近くも魔力の流れをつかもうとしてるのに、全然できなくて傷心中なんだよ!
おまけに、大事だと思われる夢の内容も思い出せなくて、二重にへこんでるんだよ!
ほっとけ!!
プイッと顔をそむけた俺の頭に、けんだこのようなものができていて硬いパパさんの手がポンとおかれた。
そして、そっとガラス細工を扱うかのように優しく撫でられる。
ふみ───。
力加減といい、かすかに匂う森のような香りといい、ぬくもりといい、最高に心地よい!
ママさんの柔らかくしなやかな手で撫でられるのも好きだけど、パパさんの硬い、だけど安心させる手で撫でられるのも結構好きだと最近になって自覚した。
最近になった主な理由はあのケバケバメガネ事件があり認めたくなかったからである。
「おっ、いい顔つきになってきたな。
生後六カ月にしてはいはいをマスターして、一人で立てるようにもなって、本当すごいよ、お前は。
きっと頭の方も俺たちが想像できないスピードで成長してるんだろうな。
なにがそんなにお前を不安にさせているかはわからないが、お前にはママも兄ちゃんも俺もついてる。
頑張りすぎなんだよ、お前は。
今みたいに、ダラーとしたヘニョヘニョな顔してろ」
失礼な!俺、ヘニョヘニョな顔じゃないぞ!
地味な顔ではあるけど……
「ハハ、むくれるな、むくれるな。
お前にすごいプレゼントをやるから」
すごいプレゼント?
あのケバケバメガネみたいなのじゃないよな…
じと-した視線でみる俺をよそに、パパさんはいそいそとポケットからなにかを取り出した。
一見すると四角い木の塊のそれは、よくよくみると四隅に動く球体があり、16のピースでできている。
これはもしや……
「これは知恵の輪といってな、頭を働かしてつなぎ合わせたり抜き放したりして遊ぶものなんだ。
こいつは全部外すと16のピースに分かれる。
こいつジョナサン=オブライエンっていう俺の古い友達がつくったもので、俺が成人したときの祝いにもらったものなんだ。
解くのに三日三晩はかかる、とても難しいもので赤ん坊にやらせるようなものではない……普通のなら、な。
お前は俺のしゃべる言葉を全部理解しているようだし、隠れてやっているつもりだろうが魔力操作の練習もしているし、こいつを解く力は十分にあるだろう。
息抜きがてらにやってくれ」
俺は驚いて息が止まった───バレてる、しかもこの様子だと前々からだろう。
バレる要素は……いろいろ思い当たるが…
「そんな顔するな。
お前はちょっと成長スピードが早いだけだ。
どんなお前であっても俺の可愛い息子であることにかわりはない。
ただ、これから魔力操作の練習するときは俺かママが側にいるときにしろよ、いいな?」
コクリと頷くと、パパさんは満足そうに笑って俺に知恵の輪を握らせた。
なんかもういろんなものが頭の中でごちゃまぜになる。
俺は……
「後、もう一つこの最高な服もプレゼントだ」
混乱した頭でその服をみて───一気に思考が冷静になった。
その服は、赤と緑の縦縞の生地に紫色で───
『いいわけして、いいわけ?』とロゴが入っていた。
……パパさん、俺、さみーです。
北極ですかここ?
「これも、あの素晴らしいメガネを作ってくれた知り合いに頼んで、ちょちょいとあつらえてもらったものなんだ。
さ、さっそく着てみてくれ!」
パパさんはズイズイと服をもって迫ってくる。
俺は……パパさんのこと見直して、仕返しは十円玉ハゲできろと心の中で叫ぶだけにしようと思っていたのに、あなたって人は……
五百円玉ハゲ、二つできてしまえ───!!
パパさん、ケバケバメガネと寒い服のお返しはいつか十倍にして返すから!!
お・楽・し・み・に・♡
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