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油断大敵な二人の関係
「…――じゃあ、お前の悩みって阿川か?」
柏木は唐突にそんなことを口にした。その言葉に思わず目が丸くなって表情が固まった。そして何だか顔から冷や汗が滲み出た。
「なっ、なに…何言ってるんだよ急に。俺の悩みがあいつだって……?」
柏木がそう言ってくると、動揺した気持ちを隠す為とぼけた返事をした。するとアイツがこっちをジーッと見てきた。その視線が急に心を煽った。
「違うのか?俺はてっきり、お前があいつのことで悩んでるのかと思った――」
「なっ……!?」
一瞬、その言葉に焦った。もしかしたら柏木は俺達の関係を知って……
「ほら、アイツ。俺達の後輩だけど何かと偉そうじゃん。それに新人の癖に仕事もできてる上に、戸田課長にも気に入られてるだろ? あんな奴が自分達の後輩だったらはっきり言って面白くないよな」
柏木は急にそんなことをぼやくと話を続けた。俺は隣で動揺しながらも黙って話を聞いた。
「俺、アイツ苦手。ていうか、ちょっとジェラシーだったり。俺には親しくしないでお前だけにはやけに親しいよな? 同じ先輩なのにこの温度差って……。良かったな葛城、可愛い後輩に気に入られて!」
アイツはそう言っていきなり背中をバシッと叩いてきた。柏木の話から、俺と阿川が怪しい関係だとは気付いてない様子だった。それどころか、自分の不満を隣で話し続けた。
「…まあ、アイツが最近お前にやたら絡んでるのは知ってるけどさ?」
「柏木?」
「お前、あーいった奴とか苦手だろ?もしアイツが迷惑するようなことしてるなら、今度代わりにビシッと言っておいてやってもいいぞ?」
柏木はそう言ってくると何だか心配してる様子だった。親友のその言葉に有難みを感じると、俺は大丈夫だと一言返事をした。
「――ああ、ありがとう。もし何かあったらお前に相談するよ。気にかけてくれてサンキューな」
「おう、任せろ! お前とは中学時代からの親友だ。困ったり悩んでる事があったら俺に遠慮なく相談して来い!」
柏木はそう言って自分の胸を叩くと、誇らしげに目の前で語った。
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