「お前今、悩みあるだろ？」 「なっ、悩みなんてあるはずないだろ……！？」 「嘘つくな。目が泳い出るぞ？」 「しつこい……！」 「あっ、ほら。直ぐそうやってムキになる所なんて怪しい。お前さ、昔からそういうところ変わらないよな？」 「よっ、余計なお世話だ……！」 　柏木がそう言って茶化してくると、ムッとした顔で言い返した。アイツは可笑しそうにケラケラ笑っていた。そういう笑い方、昔から相変わらず変わらないなと、ふと思った。 「お前だってそういう所、変わらないよな？」 「え？」 「あ、いや……お前のそういう笑い方だ――」 　そう言って言い返すと、不意に視線をアイツに向けた。柏木は少し照れ臭そうだった。 「じゃあ、お前の悩みは狸オヤジじゃないって訳か？」 「戸田課長とは最近揉めたりしてないからな。今の所、仕事は順調だ。お前の方はどうなんだ？」 「ん、俺？　俺って悩みがありそうな奴に見えるか？」 「全然！」 「あっ、今のは軽く傷ついたな。俺だってこう見えて悩みがあるさ、たとえば今週の終わりに仲間から合コン誘ってもらえるかな〜とか、合コンに可愛い女の子くるかな〜とか。こう見えて立派な悩みだろ？」 　アイツは恥じらいも無く堂々と、そんなことを言ってきた。俺は半笑いを浮かべながら軽く相槌した。 「さすが女好き。そう言えばお前って昔からそういう奴だったな」 「あ、今笑ったな？」 柏木はそう言って言い返すと顔が少しむくれた。まるで子供みたいだ。でもそう言うの自然な感じで悪くなかった。だから気がつくと、隣で一緒に笑っていた。