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油断大敵な二人の関係
エレベーターの中で俺と阿川は目を反らしたまま前だけをみると、お互いに不機嫌な表情で口を閉ざして沈黙した。2人だけのエレベーターの中は、会社の中だと言うのにやけに無音で静かに感じた。俺は両腕を組むと、後ろにもたれてため息をついた。
――なんだよ、阿川の奴。いつもなら人のことをみつけたら直ぐに騒がしく話かけてくるのに。何だその表情は?俺が何かしたか?
言いたいことがあるなら、ハッキリ言えよ……!
クソッ……!
イラだつと、フンと言って壁側に向かって顔をそらした。アイツとは別の方向を向いた。まるで不機嫌な態度をとる子供みたいだった。俺が隣でイラついているのにアイツは今だに無言だった。
俺が何したって言うんだ……!
俺が…――!
「ッ……!」
そう思った途端、ひとつだけ心当たりがある記憶が頭の中に過った。
……まさかな。まさか、あのトイレでのことか?
そう言えばあの時、柏木が何か俺に言いかけていたな。あれはなんだったんだ――?
それで阿川があの時、偶然トイレにきたんだよな。あのあと居ずらくなって二人の前から……。
っ、阿川が変なこと言うからいけないんだ……!
俺と柏木はただの……!
そう思った瞬間、急に視線が気になった。不意に振り向くとアイツが俺のことをジッとみていた。
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