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油断大敵な二人の関係

視線がぶつかると俺は息を呑んだ。阿川はジッとこっちを見てきた。射ぬくような視線が、やけに胸の奥をざわつかせた。 一瞬、体がピクッと反応した。その視線で見つめられると、急に体が熱くなった。 「なっ……」 あいつは俺の方をジッとみてくると、不意に顔が近づいて来たような気がした。そう思った途端、組んでいた両腕が緩んだ。そして鼓動がいきなり高鳴った。 「あが…わ……?」 その時、エレベーターのドアが突然、開いた。 「ッ……!?」 ドアが開くと同時に外から人の群れが押し寄せた。そう言えば、ここが会社だったことを忘れかけた。急に現実に戻ると、俺は奥の方へと押し込まれた。そしてあいつも後ろに押されると、俺と阿川は体が密着状態になった。 エレベーターの中は、あっという間に満員状態になった。俺は近くでアイツの体の体温を感じた。肩が触れているだけなのに自分の体が熱くなって仕方なかった。  たった数秒の間、アイツと体が触れているだけなのに、自分の鼓動の音がうるさくてしょうがなかった――。 エレベーターは上に上昇すると各階で停まっては中から人が次々に降りて行った。そして人が徐々に減っていった。さっきの満員状態が嘘のようにエレベーターの中は広く感じた。そして、また2人きりになった。次の階でエレベーターが停まると俺は何もなかったような表情で降りようとした。そして、扉が開いた瞬間、アイツが右手を掴んできた。

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