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不機嫌な彼。
「…な、なんだよ。いきなり驚かすなよ。ビックリしただろ?」
柏木さんはそう言うと苦笑いを浮かべて笑っていた。俺はブスッとした表情で、無反応な態度をとった。そして、そのままズカズカと中に入って行くと洗面台の前に立って手を洗った。
「――そうですかぁ? 僕は驚かせたつもりはないんですけどね。まあ、会社なんだし、偶然に居合わす時もありますよ」
そう言って皮肉混じりに言い返した。
「あ、ああ…。そうだよな?」
彼はぎこちなく話すと自分の頭をかいて笑った。鏡の前で目を細めると、不機嫌な態度で接した。そして、皮肉混じりに尋ねた。
「――仲、良いんですね?」
「ん? ああ、そうだな。葛城とは古い仲だからな……」
「古い仲……?」
「ああ、そうだけど。それがどうかしたか?」
「いえ、べつに…――。随分と仲が良いんだなと思いまして。一緒にお酒を飲む仲なんだから親密な関係かと思ったんです」
「え、なんだよそれ? おいおい、突然ヘンな事言うなよ」
「違うんですか?」
意味深な言葉で不意に彼に尋ねると、洗面台の前で後ろを振り向いて反応を伺った。
「俺達、親密な関係に見えるか?」
「そうですねぇ。他人からみたら2人とも、仲が良いとおもいますよ――?」
「はははっ。困ったなぁ」
柏木さんは満更じゃない表情で笑っていた。
その表情に俺はイラッときた。
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