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急接近。
湯船に浸かりながら改めて冷静に考えてみた。酔っ払ったアイツを家まで送り届けたはいいが、この状況は実にまずくないか。それこそ無防備な赤ずきんが何も警戒しないままオオカミの巣穴に自分から飛び込んで行くようなもんだ。
俺とした事が迂闊だった。酔っ払ってるなら何も出来ないようなヤツとは思えない。むしろ、その逆だ。勢い任せで食われる可能性がある。
「しまった。油断したな…――」
よりによって、風呂場なんか逃げ場がないのも同じだ。いつアイツが来て、オオカミになるのも無きにしも非ずだ。罠に嵌められた気分で、妙な緊張感が体に走ると息を呑んだ。
「あの野郎、もし来たら蹴り入れてやる……!」
そこで身の危険を感じると、奴が来る前に風呂から出た。そして急いで体を拭くとTシャツと下着姿で頭にバスタオルを被ってソッーッと脱衣場を出た。廊下を出るとアイツの姿が無かった。そこで緊張感が緩むと疲れた溜め息が出た。
「部屋で大人しくしてるようだな。ハァ…。なんか疲れるな。コイツの家の中じゃ油断も出来ないなまったく…――」
廊下を歩いてリビングに行くと、部屋は明るく電気がついたままだった。名前を呼んだけど返事は無かった。
冷蔵庫を開けると、さっきアイツが買ってきたビールをあけて一口飲むと椅子に座って髪を乾かした。
リビングは広々とした落ち着いた空間だった。開放的なバルコニーに外から見える夜景が、綺麗だった。ビールを飲みながら寛いでるとなかなかアイツが来なかった。
「…――おかしいな。風呂は空いてるからとっくに入って来てもいい頃なのに。アイツ、部屋で何してるんだ?」
ビールを飲み終わると椅子から立ち上がって、阿川の様子を見に行った。名前を呼びながら適当に部屋を開けて回ると奥の部屋に辿り着いた。
「ここに居るのか阿川? 風呂空いたぞ、入って来いよ!」
ドアを空けて中に入るとそこで俺は驚いた。阿川は着替えないまま、首にバスタオルだけをかけてそのままベッドで仰向けで爆睡して寝ていた――。
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