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恋の行方。
何気無く視線を向けると、斜め向かい側の席にいる阿川を見た。俺の視線に気がつくとアイツは小さく手を振ってニコッと笑ってきた。ふと笑いかけてきた笑顔にドキッっとすると思わず視線を反らした。
胸の奥が何故かドキドキしてきた。自分でも、何だかおかしい。最近ちょっとした事でアイツにドキッとしてしまう事が増えてきた。淡い気持ちに心が揺れると顔が何だか急に熱くなってきた。
「どうした葛城? 顔赤いぞ? 酒飲み過ぎじゃないか?」
「ん? そーかもな……。ちょっと、酔いが回ったかも」
「なあ、葛城。お前最近、なんだか少し変わったよな。さっきだって阿川の話に剥きになったし。ああ言うヤツ、苦手で嫌いだったろ――?」
「……ああ、確かにな。アイツは俺よりも出来た奴だったからな。前は嫌いだったかも」
「じゃあ、今は?」
「さあ…――」
アイツに一言話すと席から立ち上がってお手洗いに向かった。店内は騒がしく、唯一落ち着ける空間はトイレの中だった。不意に柏木の話が頭の中で繰り返しリピートした。
――“じゃあ、今は?”―――
と言う質問に、自分自身でもハッキリとした答えが出なかった。
俺は阿川を好きなのか?
それとも嫌いなのか?
好きの意味に「その意味」を見いだすなら、俺はアイツにどっちなんだろう――。
洗面台で顔を洗うと、静かに自分の気持ちに向かいあった。今まで同性を好きになった事が無い俺が、ホントに同じ同性の男を愛せるのか?
俺は阿川を…――。
洗面台の上で両手をつくと不意にアイツのことを思った。すると奥の個室から阿川がひょっこりと出てきた。
「あ…! 葛城さん…――!」
アイツは名前を呼ぶと、そのまま俺に向かって勢い良く抱きついてきた。
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