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恋の行方。
「葛城さ~んっ!!」
「なっ、コラ…! いきなり抱きついてくるんじゃねーよ!?」
「だって~!」
阿川は俺の方に向かって泣きながら抱きついてきた。いきなり抱きつかれると、慌てて振りほどこうとした。
「戸田課長がさっきから酷いんですよ〜〜!! 勝手に人のグラスにビールを注いで、飲まそうとするし、継ぎ足し嫌いなのにあのタヌキオヤジがイジメてくるんです! あれ絶対、パワハラですよ!?」
「あのなぁ~。お前が嫌な事は嫌って言わないのがいけないんだろ? ビール注がれたら飲めませんって言えばいいだろ。それにお前も調子こいて一気飲みするから、周りも面白がって止めないんだろ!俺に言わせたらそんなのは自業自得だ!」
「葛城さん、何も怒らなくてもいいじゃないですか~!」
「それよりバカ、離せよ! 誰か来るだろ!?」
「葛城さんも戸田課長の所に来て一緒に飲みましょうよ! 貴方と離れた所で飲むなんて俺、退屈過ぎて疲れちゃいますよ~!」
「俺は戸田課長が嫌い何だよ! 誰があんな奴の所で一緒に飲むか! 酒が不味くなる、断る!」
「じゃあ、せめて近い所に来て下さいよ! 柏木さんと仲良く飲んで…! 俺の気持ちなんか、知らないで…――!」
「ッ、阿川…――?」
アイツは俺の事をギュッと抱き締めてくると、体が僅かに震えていた。そして、俺の肩に顔を乗せてくると小さな声で「嫌だ」と呟いた。まるで子供見たいにただをこねた。
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