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恋の行方。

 …――冗談だろ。あいつは俺の『親友』だぞ。  中学生の頃からいつも一緒につるんで遊んだりしてる仲だったし。どっちかと言うと、他の友人よりもアイツとは仲良くしてた方だ。  そこに恋愛感情すらお互いに無かったが、俺はアイツとは、『親友』として絆を深めていた。 ……それが何故、こうなる?  嘘だろ。何かの冗談だろ。そんなはず、絶対に有り得ない。陽一に限ってそんなはず…――。  だってアイツは……。 呆然としたまま息を呑むと、体が僅かに震えた。そして、自分の中でさっきので出来事は単なる『夢』だったと結論づいた。  きっとそれ以上、深く考えてしまうと。自分の気持ちがアイツに対して、ワケが分からなくなりそうだった。 「――きっと、俺の気の所為だ。陽一が俺なんかにキスなんかしてくるはずが無い……!」  その場で強く否定すると、それ以上は考えないようにしようと思考にフタをした。そして、自分の唇を手の甲で擦って拭い消そうとした。自分の唇に彼の唇の感触が僅かに残ってる気がした。 「ッ…――!」 強く擦り過ぎて、うっかり下唇を切った。そこで冷静になる為に深呼吸をすると、頭を冷やす為にシャワーを浴びに部屋から出た。そして、着替を持って浴室に行こうとした。すると玄関の呼鈴が突如、鳴った。 「ん……? 誰だ、こんな時間に。まさか…――」  一瞬、陽一が忘れ物を取りに戻ってきたのかと思った。こんな状態でアイツに会うのは自分でも気が引けた。どうしようかと迷っていると、再び呼鈴が鳴った。そこで、意を決して玄関のドアを開けると、目の前に阿川が立っていた。 「あっ、阿川…――!?」  急にアイツが目の前にいる事に驚くと、思わず声が裏返った。 「葛城…さん……」  アイツは目の前で小刻みに震えると、いきなり両手を伸ばしてカバっと抱き締めてきた。 『葛城さんっ!!』 「わっ、バカ……!」 急に抱き締められると思わず動揺した。そして、その腕を振り払うとした。 「いきなり何するんだ! 離せ、バカ! こんな所でやめろ! 誰かに見られるだろ……!?」  玄関の前でアイツに抱き締められたまま、目の前で慌てた。だけどアイツは、俺の事をなかなか離そうとしなかった。 「大体、なんでお前がここに居るんだよ! 課長達はどうし…――」 「良かったぁ。貴方に何も無くて……」 「え……?」  阿川は目の前でそう答えると、ひどく心配した様子で俺の顔をジッと見つめてきた。そして、抱きしめてきた腕がわずかに震えていた。

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