107 / 126

恋の行方。

「あんな奴らなんな知りませよ! 二次会なんかとっくにすっぽかしましたし、俺にとってはどうでもいい事です! そんなことよりも俺は貴方の方が一番大事です!」 「阿川、お前…――!」 「だって貴方が倒れたのも俺の『所為(せい)』ですし、そんな貴方をほっといたまま、他の事を気にしてるほど、出来た人間でもないです! 本当は貴方の事をおぶって帰るつもりだったんです。でも、柏木さんにそれを止められて、仕方なく彼に貴方を任せたんです! 本当は貴方の事を任せるのも凄く嫌でしたけど…――!」 「阿川……」 あいつは目の前でそう言って来ると、ありのままの感情をストレートにぶつけてきた。そして俺の事を強く抱き締めたまま離さなかった。何となく状況を理解すると、疲れた表情でため息をついて呆れた。 「――それで気になって、俺の様子を見に来たってわけか……。こんな時間になってもお前にとってはお構いなしか?」 「葛城さん、勝手に来たこと怒ってますか……?」 「いいや、呆れただけだ。俺みたいなヤツを気にかける物好きもいるんだなって……」 「え……?」 「一つ言っておく。アレはお前のせいじゃない。気にするな。俺が単に課長の前で『バカ』をやりたかっただけだ」  そう言って話すと、あいつの腕を振り払った。そして、玄関の扉を開けた。 「葛城さん、でも…――!」 「俺の様子見に来た所で、終電はとっくに過ぎてんだろ。わざわざ見に来た奴を追い返す程、俺も冷たい人間じゃないからな。どうせ来たならこのまま、うちに泊まって行けよ」  玄関の前でアイツに一言話すと、自分の部屋に招き入れた。阿川は突然の事に驚いた表情をしていた。 「泊まって行くのか泊まって行かないのか、どうするか、お前が決めろ……!」  ドアノブに手をかけて背中を向けると、選択肢を与えた。前の自分なら、アイツが家にきたなら速攻、追い返してる方だ。こんなこと、自分でも有り得ないくらいだ。なのに俺は受け入れようとしている。アイツが俺の事をどう思ってるのか、わかった上で…――。

ともだちにシェアしよう!