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恋の行方。
「俺の事、疑ったてたのか。疑って無かったのか本当はどっちだ?」
威圧しながら睨むと、再び目の前で拳をバキバキ鳴らした。
「葛城さん、俺は別に疑ってなんか…――!」
「ああっ?」
その一言にギロッと眼光を鋭くさせた。
「……ごっ、ごめんなさい。本当はちょっぴり貴方を疑ってました……」
阿川は素直に白状すると、床に頭を下げて土下座をした。一瞬『やっぱり疑ってやがった』と思うと、顔を引きつらせて呆れた。
「ほれ見ろ。お前には本当、つくづく呆れる――」
「で、でも…! 葛城さんも悪いんですよ、そんな乱れた格好で俺の前に出てくるから! あれじゃ誰でも誤解しますよ…――!」
「こいつ……!」
その言葉にピキッと頭に血管が浮き出た。
「どこが乱れた格好だ! どこが! 今の格好の方が、めちゃくちゃ乱れてるわっ!! しかも、あの服は買ったばっかりなんだぞ! お前あとで弁償しろよ、弁償!」
「はぁ……。別に良いですけど? まあ、確かに今の格好の方が大分、乱れてますね♡」
そう言ってくると、ジロジロと胸元辺りを見てきた。その視線に気がつくと顔が急に赤くなって慌てた。そして、肌蹴たワイシャツを片手でグッと押さえて前を隠した。
「バカっ、変な目で見てくんな……!」
「べつに良いじゃないですか、見ても減りませんって……」
『減るっ!!』
急にムキになってくると、自分でもアホみたいに言い返した。
「えーっと、ああ、はいはい。ごめんなさい……。確かに見られたら減りますね?」
アイツは前で顔を指先でポリポリとかいた。
「……お前、人の事バカにしてるだろ?」
「そっ、そんなことは無いですよ! 貴方をバカにするなんて滅相もない…――!」
「大体な! 人が家の中で、どんな格好で居ようが関係無いだろ!? それに人がシャワーに入ろうとした時に勝手に家に来たんだろ!?」
『シャ、シャワー……!?』
目の前で驚くとこっちを疑って見てきた。
「お前。また変な事、想像しただろ?」
「しっ、してませんよ! 葛城さんを疑うなんて絶対……!」
呆れた顔で疲れた溜息が出てくると、タバコが吸いたくなってきた。
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