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恋の行方。

アイツはうちの部署で燻ってるような連中とは、かけ離れた『能力』と『素質』と『無限の可能性』を秘めているのにも関わらずアイツは何故か内の部署から一歩も出ず、いつまでもあの場所に留まっていた。 俺はそれを見て不思議でならなかった。自分には『無いもの』を全部持っているにも関わらずに、本気で手を伸ばしたら一番、手が届く場所に居るのにアイツはそれを望もうとはしなかった。ただ何も変わらることも無く。アイツはアイツのままだった。 俺の前でヘラヘラして笑って、気が抜けてる所も相変わらずで、能天気な性格も変わらなかった。俺はそんなアイツのゆるい感じが気に食わなくて嫌っていた。本当は何でもに自分がバカにされてるような気がしてならなかった。 そんなある時、不意に気がついた。それは、俺を見てくるアイツの()だった。  ふとした瞬間に見せてくるアイツの目は、普段とは別の視線だった。その視線の『意味』に俺は気づくはずも無かった。  まさかアイツが俺の事をだったとは、夢にも思いがけなかった。そう、まさに俺の中で衝撃的な事実だった。  今まで異性が恋愛対象だった自分が、同じ同性の男から、告白されるなんて考えもしなかった。そして、アイツはバカかが付くほどのバカ正直で真っ直ぐな『愛』を俺にぶつけてくる。 それが純粋な愛ほど、俺の気持ちはアイツの前で迷ってばかりでなかなか答えが出せない。 純愛するような歳でも無いのに、アイツの想いは一途なほど『純粋』で、それを簡単に無視する事が出来ないような気持ちが心の中で彷徨いながら答えを探そうとしている。 「本当に俺もどうかしてるぜ……。よりによって、あんな奴に頭を悩ます日が来るなんて…――」  湯船に浸かりながら、ふと天井を見上げながら呟いた。    ホントに最近の俺は自分でもどうかしている。『愛』だとか、『恋』だとか、彼女の時で、もう懲りたはずなのに。何で、今はこんなにも、また悩む日が来るなんて……。  きっとアイツとの出逢いが、偶然の出逢いじゃ無かったとしたら、何か運命めいたものをアイツに感じるのだろうか。 「そろそろこの気持ちに答えを出してやらないといけないのにな…――」    ――“貴方の気持ちが知りたい”――   「俺は……」 「葛城さん」 「っ…――!?」  突然、浴室の外からアイツに名前を呼ばれた。その瞬間、ハッと我に返って胸がドキッとした。

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