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―彼の想い―(阿川side)
「お、阿川じゃん! みんな盛り上がってるか?」
そこで能天気に話してくると俺は目を疑った。
「あれ、萩原さんだけですか? 柏木さんは?」
「ん? あの人なら葛城さんの家にまだいるぞ。ほっとくのも心配だからって傍で看てるってさ。所で阿川、みんながいる部屋って605室だっけ?」
彼から話しを聞かされた途端に顔が青ざめた。まさに『最低最悪』な状況だった。よりによってあんな状態の葛城さんを、あの人と一緒にさせるなんて――。
「……ああ、やっぱり駄目だ」
「ん?」
「萩原さんとなら大丈夫だと思ってましたけど、俺が甘かったみたいですね――」
そう言ってすれ違い際に彼の肩を押すと、エレベーターの中から追い出した。そして、下の階のボタンを押した。
「まあ、最初から貴方を頼りにしてませんでしたけどね。もちろんあの人も……」
「おい、阿川…――!?」
そこで無視するとそのままエレベーターの扉を締めて一階に降りた。その後、急いで店から出るとタクシーを掴まえて、彼が住むマンションへと向かった。
「クソッ、よりによってあの人と――!」
自分の親指の爪を噛むと苛立った顔で呟いた。頭の中は嫉妬で気が狂いそうになった。
もし、今間違いなく目の前にいたら。あの人をぶん殴ってるか、殺してる。それくらい頭の中は嫉妬で気が狂いそうになった。最低最悪な事態が起きる前に、一刻でも早く葛城さんの下へと急ぐ気持ちを走らせた。
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