125 / 126

―彼の想い―(阿川side)

――車を走らせて彼の住むマンションへ向かった。そして、慌てて車を降りると真っ先に部屋に向かおうとした。一回深呼吸をしてから、自分の焦る気持ちを落ち着かせた。  もしもの場合は想定した。   もし、彼の家に行って其処で俺が最低最悪な『事態』を見てしまったら、その時、自分は冷静でいられるのだろうか?  葛城さんは前に言った。柏木さんとは、ただの友人だと――。  でも、本当にそう何だろうか? もし二人で抱き合っていたり、柏木さんが眠っている彼の体に勝手に触れてたりしてたら、きっと俺はあの人を『殺す』。  そんな事が頭に過ると、とてもじゃ冷静になれない自分がいた。こう見えて嫉妬深い俺はその時のことを考えた時に自分で何をするか分からない所がある。だから直ぐには使わずに。自分の先走る気持ちを落ち着かせる為に、近くの花壇で腰を降ろして座った。そして、マンションの出入り口を黙って見ながら考えた。  自分の中であと10分。いや、5分したら彼の家に急いで向かおうと決めた。あくまでもこれは相手に出て行く猶予を与えた時間だ。それが長い程、葛城さんの身に『危険』が迫っている事を示していた。もうその時は、どんな言い訳も俺には通用しない。きっとその時は俺は間違いなくあの人を――。

ともだちにシェアしよう!