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つがう

「どこまで仲良いのふたり」 高3、2月。 珍しく雪が積もって、環と一緒に雪だるまを作った。 でかいの作ろうとか言って、玄関の前で。 綾は高校から帰ってきて、呆れたように笑った。 小さいときなら一緒に作ってたのに、綾は寒い寒い!完成したら見に来るねーとか言って、さっさと家に入っていった。 環も俺も、同じ大学に合格した。 環は油画専攻。俺は服飾専攻。 環とはなればなれになるなんて、考えられなかった。 「ねえ環、大学どうすんの?」 「んー、絵描きたい。油画。デッサンとか一応ね、がんばってきたし」 「そっか。俺、どうしよっかな」 必死で探した。やりたいこと、興味あること、環のそばにいられること 「服とか、アクセサリーとか、作る」 「服飾デザイン?」 「うん、そういうのやりたい」 分からないなりに一生懸命勉強した。 ふたりでいたくて それで、だから、俺は変わらず環と一緒にすごしている。 いびつな雪だるまをつくる。 「がったがたじゃん!もうちょい修正しよう」 「石で削ろう」 無心で雪だるまを削った。 まるく、まるくなるように。 きれいなまるになるように。 となりを見たら、環も真剣に雪だるま削ってて、可笑しくなった。 雪をひとつまみして、環の顔に投げた。 「うわ!ちょっと、なんだよ」 環は顔をごしごし擦って、こっちを見て笑った。 それから俺の顔にも雪をかけた。 ばかみたいに、笑って騒いだ。 ふたりでならんでくっついた。 俺は、俺だけだろうけど、環が俺の上に乗ってあんなことになった、あのできごとにはかなり、がんじがらめになっていて …や、俺が、がんじがらめになりにいってて、 だから、俺はずっと、またあんなふうに環となりたいよって思ってて でも、当たり前にあれ以来なにもないし、環にも同級生の彼女ができた。 環からしたら、へんてこな予習だったんだろうな、って思う。 ふたりで並んで、雪だるまを見た。 うまくできたと思う。 「できたー」 「大作だよ、溶けてほしくない。ずっと残っててほしい」 「あはは、だねえ。俺と秋生の合作」 環は笑った。 俺も笑い返した。 だいすきだよ、どうして気付いてくれないの、 長く伸びた前髪を、耳にひっかけた。

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