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第15話

「今までさんざんご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。今までお世話になったお金は必ずお返しします。本当に、すみませんでした」  母の火葬を終え中学を卒業してすぐに和仁は妹の手を引いて明子へと深く深く頭を下げた。流石に保証人もなくアパートを借りることはできず明子の助けを貰うことになってしまったが、見つけたアルバイト先の店主がとても良い人で、事情を説明したら前払いということでひと月分の給料をすぐに渡してくれ、なんとかこれ以上明子に金を出してもらうことは避けられた。  もう迷惑はかけられない。そう言って出て行こうとする和仁を明子はどこか痛まし気に見ていた。彼女は本当に優しくて、母に思うところは沢山あっただろうに一度もその不満を子供である和仁や媛香にぶつけることはなかった。もう一度深々と頭を下げて妹の手を引き部屋を出ようとした時、外側から扉が開かれる。そこにはいつも通り無表情の国光が立っていた。学校帰りなのだろう制服を着たままだった国光は和仁と媛香の姿を無言で見つめ、そしてすべてを察したのだろう無表情のまま言った。 「今まで通り離れに居れば良い」  それは国光の慈悲なのか、それとも子供に何ができると思っての義務感なのか、和仁にはわからない。だが国光がそう言った瞬間に後ろに立つ明子の雰囲気が硬化したことは察することができた。それに国光も気づいているはずなのに、彼は自分の母親に視線を向けることもなくただ和仁を冷たい瞳で見つめていた。和仁はその瞳に怯えながらも、小さく首を横に振る。

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