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第18話

 金は稼がなければならないが、それでも幼い媛香に寂しい思いはさせたくないと、朝食と夕食は必ず一緒に摂り、妹が眠るまでは家にいる。そんな決め事を自分に課した和仁は一日も違えずに今日まで来たが、兄の言葉にされない決め事に気づくはずもない媛香は大学生になると友人達と共に食事を摂ることも多くなり、お泊り会だプチ旅行だと家を空けることも少なくなかった。そんな媛香に心配はすれど苛立ちを感じることなど勿論なく、ただ兄がいなくとも成り立つ彼女の日常にほんの少し寂しさを覚える。昨日もアルバイト仲間と一緒に飲んでそのまま友人宅に泊まったという媛香は、楽しそうに昨夜あったことを夕食時に語った。それをにこやかに微笑みながら聞く和仁に、そういえば、と思い出したように媛香が口を開く。 「確かお兄ちゃんは国光さんと仲良かったよね? ほら、冷泉家の」  あまり聞きたくない名前にピクリと箸を持つ手が震える。それに気づかない媛香はニコニコと微笑みながら話を続けた。 「友達が言ってたんだけどね、今度国光さんがお見合いするんだって。北大路の御子息と同時にお見合いをするらしいから、良家のご令嬢はソワソワしてるらしいよ」 「えッ……」  お見合い? 「冷泉家のご子息が?」  食事の手を止めて目を丸く見開く和仁に、媛香は一瞬首を傾げ、そしてハッとすると気まずいというかのように瞼を伏せた。

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