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第38話 全力で愛してくれ9

次の日、携帯のアラームで目が覚めた櫂斗は、ベッドから降りて歩こうとして、盛大に転んだ。 (やべ、昨日の記憶が途中で切れてるけど……そして足に力が入らないっ) 櫂斗は床に手を付いたまま、冷や汗をかく。今日は平日だ、仕事があるのに、と慌てて立ち上がろうとしていると、亮介が廊下からドアを開けて覗いてきた。 「おはよう櫂斗」 「おはよう、じゃねぇ! 立てないだろどうしてくれるんだっ」 目くじらを立てる櫂斗に対して、亮介は上機嫌でニコニコしている。その顔のまま彼は寝室に入ってきて、そばにしゃがんだ。 「昨日の櫂斗すげぇ可愛かった。思い出すだけでほら」 そう言って櫂斗の片手を亮介の股間に持っていかれ、櫂斗は思わず手を引く。そこは宣言通り熱くなっていて、櫂斗の顔も熱くなる。 「という訳で、朝飯前に一回……で済むかは微妙だけど、するぞ」 「え、いや、だから今日は出勤しなきゃ……っ」 「一日くらい病欠したって何ともないだろ」 実際歩けないわけだし、と言われ、櫂斗は恥ずかしさと怒りで震えた。 しかし身体に力が入らない櫂斗の抵抗は虚しく、そのまま押し倒されてしまう。首筋を舐められシャツの下に入った手で乳首を触られると、ビクビクと震えて亮介にしがみついた。 「櫂斗、お前小井出がどんな奴か調べたんだろ?」 耳元でそう言われ、話の内容にビクッとする。 「な、何で……っ」 「だから、履歴くらい消せって」 亮介は笑う。可愛い奴だな、と耳たぶを噛まれ、このまま流されても良いか、と思いかける。けれど、いやいや、と亮介を押して抵抗した。 「退院した時は結構我慢してたからなぁ」 何だかんだ言って楽しそうな亮介。昨日は激しかったから、本当に余裕が無かったようだ。 「ってか、お前どんだけ性欲有り余ってんだよっ」 昨日だって散々しただろうに、亮介はまだ足りないらしい。 「ん? そんなの、お前限定なら無限にあるっつーの」 「うー……俺の先生としてのイメージが……社会人としてこんな理由で休むなんて……」 櫂斗は唸る。ダメな大人だ、と呟いたらその唇にキスをされた。 逆に完璧な大人なんているのか? と亮介は笑う。人間誰しも欠点はあるだろ、と言われるけれど、それとこれとは違う気がする。するとバカ言え、と亮介はキスをした。 「人間欠点が無きゃ何も面白くないぞ? お前の母親が望んでいたのは、そんな人間だ」 「うーん?」 何だろう、何か丸め込まれてる気がする。でも、嫌じゃないから困るのだ。 櫂斗はそう思いながら、彼のキスと愛撫を受け入れた。彼の温かな体温に身震いすると、亮介の目尻が下がる。 「愛してる」 唇が付きそうになる寸前、亮介はそう囁いてキスをくれた。 蕩けそうな程の甘い声と言葉に、櫂斗はまたグズグズに溶かされていくのだった。

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