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ふとした瞬間に訪れる黒歴史1
気づいてしまった――
俺は大きなミスをしてしまったということに。
今すぐバイトなど放り出して家に帰りたい。でも、いくら俺でもそんな無責任なことはできない。これでも真面目にコンビニで働いている店員なのだ。店長にもお世話になっているし、シフトに穴を開ける訳にもいかない。だが、だが……
(指定時間にウチにいるの、姉ちゃんなんだよー……どうしよう、どうしよう!俺は姉ちゃんの口撃 を躱す余裕なんてないぞ!!)
品出しをしながら、頭の中はどうやってピンチを回避するかでグルグルしている。顔にはたぶん出ていないはずだし、誰も見ていないから問題ない。でも、時は一刻を争うのだ。
「レジお願いしまーす」
「はーい!」
それでも、時は無情に流れていく――
姉の帰宅時間と俺の帰宅時間。秒で争う展開になってきた。この胸の高鳴りが萌えならばどれだけよかったか……!
姉のことだ。ダンボールに貼られたシールと大きさだけで何か当ててきそうだ。そんな羞恥プレイなど、あってはならない。
鍛えていない足と、どうにも格好のつかない腕を振り回し、自分にとっての全力疾走を試みる。
後、少し。もう少し……!!
しかしその願い叶わず――
玄関に止まる見慣れた配送業者の車と、今、正に帰宅したばかりの姉が。
玄関先で荷物を受け取っている姿が目に飛び込んできた。
姉が判を押し、仕事を終えた配送業者のお兄さんが軽く頭を下げて車に乗り込み走り去って行く姿が、数メートル先で流れていく。俺はヘロヘロになりながら玄関に辿り着いたけれど、荒い呼吸のままその場にへたり込んでしまった。
「ま、ま、間に合わ……なかった……」
「は?何、この世の終わりみたいな顔してんの?サツキ、お帰り。荷物受け取ったけど。コレあんた宛でしょ?あぁー……そういうこと?」
姉の眼が怪しく光ったように見えたのは気のせいじゃない。ダンボールに貼られたシールを見れば、大体何だか当てられそうで怖かったから、姉より先に着きたかったのに。
「馬鹿ねー。局留めにすればよかったのにね。さすがサツキ。肝心なところで詰めが甘い!中身までは見ないけど、どうせ大人のおも……」
「言うな!分かったとしても言うなって!!後生だから!!」
姉はエスパーか何かなのだろうか?そう、コイツは俺が何故か、何故か買ってしまったブツなのだから――
こうなることは分かりきっていた。
言い訳をどれだけ重ねようと、もう遅すぎた。
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