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突然始まる撮影会2
リツキは俺を見ながら楽しそうにニコニコと笑っている。俺は何だかばつが悪くてまともに顔が見られない。別に悪いことはしていないのに、結婚式の誓いのキスをされたみたいで気恥ずかしくてたまらない。自分では見えないけど、この感じは顔だけじゃなくて耳まで赤い気がする。
「照れて赤くなったところも撮っておかないと、後でサツキファイルに入れとくか」
「それ……冗談だろ?嘘だと言ってくれ、リツキ。そんなファイルはゴミ箱へ!!」
「嫌なこった。俺からサツキを取ったら何も残らない」
瞼に、目尻に、鼻に。
リツキのキス攻撃が止まらない。優しく、触れるだけのキスに、俺はどんどんと恥ずかしくなってくる。これが俗にいう、キスの嵐ってヤツなのかもしれない、と冷静に言っている場合じゃなく、それをされているのが俺という1番の問題がある。
何度も振ってくるキスに、擽ったさとまた違った感情がふつふつと湧いてくる。
「リ、リツキってば。恥ずかしいから、もう、いいって」
「だって、サツキが可愛いから我慢できない」
「高そうな衣装が汚れちゃうって!」
「そんなの気にしなくてもいいのに。サツキが嫌がることはあんまりしたくないけど、そう拒まれると無理矢理したくなる」
リツキは俺の手を掴んで自分の側に寄せると、優しく唇と唇を重ね合わせる。2人の間にふわりとかかるヴェールが行為を阻むと、リツキはそれすらも取り去ってしまう。
「ん、ん…っ…」
「……ん……なぁ、サツキ。可愛いサツキを食べていい?」
「ん、なぁっ!だ、だだだ、ダメに決まってるだろ?い、今コレ脱ぐから。離れて!」
「おあずけしろって?サツキさんってばなかなか鬼畜だな」
リボンに手を掛けてレェスの衣装を順番に脱ごうとしているのに、焦ってリボンが全く外れる気配がない。リツキは言葉通りにおあずけしているのか、手伝おうとしてくれない。俺が1人で、もだもだしていて恥ずかしい。
「リツキ、見てないで手伝って!」
「だぁめ。おあずけって言ったのサツキだし」
「言ってないし!言ったのリツキだし!」
「ハハ。そうか?まぁ、どっちでもいいや。焦るサツキも俺は見ていられるし」
余裕のリツキにムッとするが、俺の指先は言う事を聞いてくれない。レェスの手袋は滑ってしまってリボンをうまく掴めない。困る俺を見かねたサツキが俺の左手首を握ると、軽く歯で手袋を噛んで脱がしていく。
「な、何して……噛んだら、レェスが破れるかも……」
「お手伝い?それに、それくらいで破れたりしないって」
「お手伝いしてくれるなら、普通にしてよ。そ、そんなエロい感じじゃなくって!」
「別にエロくしたつもりはなかったけど。サツキにはそう見えたってこと?」
リツキの悪戯な笑みが余裕を感じて余計に嫌だ。俺は墓穴を掘ったことに気づいたが、リツキは気にも留めずに手袋を床へと置くと、右手の手袋も同じように外してしまう。
俺は妙に緊張しながら固まって動けない。
「これで外しやすくなっただろ?見ててあげるから、首のリボン外してみろって」
「何で催促されてるの、俺……」
それでもこの衣装に何かあるのは何となくオタクとして許せないので、そっと指を添えて外そうとするけど、指先が噛み合わずに上手く外せない。見えそうで見えない位置で、何度も指先で触れるけれど、引っ張っているところが違うのかやっぱり外せない。しかもそれを楽しそうに見ているリツキがいるから、どうしても手が震えてしまう。
緊張して震える指先はどんどんと震えを増して自分でも制御できなくなってくる。
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