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突然始まる撮影会3

震えが止まらない俺をリツキは呆れるでもなく、優しく見守ってくれている。 そう、見守ってくれているのは心では分かっているのだが、人の視線が苦手な俺はそれすらも慣れない。悪意のない視線だとしても受け止めるのに時間がかかって、考えすぎた挙げ句に勝手に自爆して挙動不審になってしまう。 「ぷるぷるしてるな。そんなに緊張しなくてもいいのに」 「そう思うならジッと見るなって。何かやりづらいんだよ、見られてると」 「その気持ちは分からなくもないけどさ。だからといって見られてるとダメって、俺まだ何もしてないんだけど」 「それもそうなんだけど、見られてるってこと自体が何かダメなんだって」 そうなってしまうのは俺が自分に自信が持てないせいなのか分からないが。今に限らず俺は誰かから見られていると思うと、身体が固まって動かなくなってしまう。俺が何度も失敗していると、リツキがそっと俺の手に自分の手を重ねてくる。 「サツキ、大丈夫だから。俺はどんなサツキでも好きだし、無理させてるっていうならもうしないから。それでも、俺が見てるとダメか?」 リツキの言葉に俺の手の震えが止まる。優しい声色は俺の緊張をスルスルと解いていってくれた。触れられた手は温かくて俺に安堵感を与えてくれる。リツキは俺に手を添えたまま、リボンを外すのを手伝ってくれた。すると、今まで解けなかったのにあっさりと外れたリボンがリツキの手に握られた。 「よくできました」 「う、嬉しくない……」 今のでどっと疲れてしまったのだが、この繊細な衣装はまだまだ脱ぐことはできない。 ここから先は1人ではどうしようもないので、どうやってもリツキの手を借りることになるのだが……リツキは笑顔のまま俺を見るばかりだ。 「ねぇ、リツキ。笑ってないで背中のリボンも解いてくれないと、俺いつまでもこのままなんですけど?」 「うん。そうだな。もう少し見ていたかったけど、サツキに遠慮して触るのもアレだし。ちょっと待って」 リツキは俺の背後へと回ると、綺麗に編み込まれている背中のリボンの結び目をシュルリと外す。互い違いにリボンが交差しているため、着るのも誰かの手を借りないと難しいが、脱ぐのも上手に解いていかないとこんがらがってしまいそうだ。 リツキの手がリボンに触れる度に俺の肌にも触れて擽ったい。 思わず身体を揺らしてしまいそうになるのを何とか耐えようとギュッと目を瞑る。 「……サツキ?それ逆効果だぞ?俺のことが見えないのに感覚だけで追おうとすると、余計に緊張するのでは? 「うぅ……でも、ずっと部屋の壁見てるのも……」 「俺が見えないから寂しい?」 「ち、違うよ。いいから、そっちに集中して」 俺はまた必死に堪える。今、触れたのが人差し指なのか、とか。リツキは見えないけど笑ってるのかな、とか。グルグルと色々なことを考える。 俺が喋らなくなったのが気になったのか、スーッとリツキの指が俺の背中のラインをなぞった。 「ひゃぁっ!?」 「寝たのかと思った。相変わらず反応いいから起きてるか」 「そ、そういうのいらないから!俺、じっとしてる訳だし。は、早く!」 「そうだな……どうしようか?俺もサツキのうなじ見てたら我慢できなくなってきた」 首筋に熱い吐息が吹きかかり、不意打ちにビクンと身体ごと揺れる。それでもお構いなしに顔を寄せているらしいリツキが俺のうなじにピタリと何かを当てた。 「な、ななな、何……?」 「ちょっと、マーキング」 くぐもった声が耳に届いたかと思うと、うなじに触れた何かがチュウっと音を立てて俺を刺激する。ピリリとした痛みが襲ってきて、それが唇だ、と気づいた時には俺の顔も赤くなっていた。 「……リ、リツキ…ってば!す、吸わないで!そこ、目立つところ!」 「絆創膏でも貼れば大丈夫だろ。それにちょっとずつ背中が見えてくるのもエロい」 「な、何言ってんの?そんな訳ないから!も、音、立てないで……」 俺が嫌がれば嫌がるほど、チュッチュッと口付けられる。さっきみたいに痛みがくるようには吸われてないけど、擽ったさだけではない何かになりそうで。 俺は努めて冷静に息を吐き出した。

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