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飲んだくれの師匠と魔女っ子の弟子<ハロウィンSS 1>
※レイヴン視点の番外編です。
この話だけでも楽しめるように、ところどころ設定の説明を加えてあります。
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今日は楽しい祭りの日。
城下町は祭りを祝う人たちで溢れている。
昔から続いている大地の恵みに感謝するお祝いの日だ。
大地の恵みに感謝するのは種族関係ないということで、みんな様々な種族になりきって街を練り歩きながら夜更けまで祭りを楽しむ。
この祭りは国を挙げての祭りとされていて、聖ミネルファ祭とは違いアレーシュの民は全員参加が原則だ。
しかも仮面を着用しなくてはいけないので、素顔が分からなくなっている。
中には扮装などしたくないと言う人もいるが、陛下ですらお忍びで扮装するので皆しないわけにはいかないのだ。
俺も正直、扮装は得意じゃないから毎年とんがり帽子だけ被って誤魔化している。
魔塔は魔法使いの集まりなので、魔女の扮装をする人が多い。
とんがり帽子を被り黒のローブを纏い灯火 の呪文を唱えて、闇夜に光をふんわりと浮かべる姿を見かける。
「書類整理も終わったし、そろそろ街へ行こうかな。テオは……」
勿論、自分のやるべきことが優先なので祭りに参加しないと罰せられるという訳ではない。
ただ、後で陛下に祭りでどんな扮装をしたのかと質問されることが多い。
全く祭りに参加していませんと言うのは心が痛むし、国の機関に属している者としては答えられるように準備しておくべきだろう。
俺は一応魔塔の補佐官だし、祭りに参加する義務がある。
魔塔主であるテオに関しては、毎年適当に飲んだくれているだけなので酔っ払いという扮装のつもりなのかもしれない。
あの人、陛下にまで好き放題する図太い神経の持ち主だからな。
「探しに行かなくちゃダメかな? 一応、部屋も覗いておくか……」
前にサボってやればいいと、部屋にこもって浴びるように普段の倍のお酒を飲んでへらへらしていたのを思い出した。
その時のことを思い出すだけで、腹立たしくなってくる。
毎度片付けをするのは、俺だし。
今日も同じことをやらかしているのなら、やめさせないと後が面倒だ。
街へ探しに行く前に、テオの自室へ寄ることにした。
補佐官の部屋を出て、最上階のテオの自室まで螺旋状の階段を上っていく。
魔塔主は塔の一番高い位置が自室と決まっているので、長年魔塔主であるテオは俺よりも上の階にいるからだ。
テオの自室前まで着いたので、扉を叩いて呼びかける。
テオ曰く、俺が来るとすぐに分かるらしいんだけど中から返事はない。
「テオ、開けますよ」
一声かけてから扉を開ける。
相変わらず部屋は汚くて、ビンと服がそこらに転がっている。
仕方なく拾い集めながら、ソファーで寝ているかと思って覗いてみたけどソファーにはいない。
集めたものはざっくり分類分けして床へまとめてから、ふと考える。
「ま、まさか……」
嫌な予感がしてベッドへ近づくと、テオがシャツを適当に羽織った姿で爆睡していた。
かろうじてパンツを履いているけど、だらしない姿にため息しか出てこない。
この辺りも何だかお酒臭いし、ベッドの側のテーブルに酒瓶が転がってるから確実に飲んだくれていたに違いない。
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