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大人のチョコレート<バレンタインSS 2>

   ソファーに座って読書にふけっていると、扉を叩く音がした。  この気配は間違いなくレイヴンだ。  思ったよりも時間がかかったな。  窓の外の日は落ちかけてるし、もう夕方になっちまったみたいだな。  扉を開けてやると、後ろ手に何かを隠したレイヴンが部屋に入ってきた。 「テオ、何してたんですか?」 「今日は特にやることもなかったしな。読もうと思って放ってた本を読んでたが。どうした、俺に会いたかったか?」 「別に。用があったので来ただけです」  困ったような顔で見上げてくるレイちゃんは、何度見ても可愛いもんだ。  下手な隠し方をしてるブツには見ないフリをして、ソファーへ座れと顎で促す。 「で、俺に用事か。別に用がなくてもいつでも大歓迎なんだがなァ?」 「それはありがとうございます。ええと……テオに食べてもらいたいものがあって。持ってきました」  どうぞ、と恥ずかしそうに俺へ箱を押し付けてくる。  これが噂の本命チョコってヤツか?  俺はニヤっと笑んで、ありがたく箱を受けとる。 「シンプルな箱に入ってるな。レイヴンが作ったものか?」 「はい。うまくできてるといいんですけど……」  茶色の箱には赤いリボンが巻かれていた。  ゆっくりと解いて中身を確認する。  予想通りチョコレートだが、形が少し変わってるな。 「へえ、これもしかして酒瓶か?」 「よく分かりましたね。中に街でおススメのお酒が入ってるんです。すごく人気なお酒だったので、美味しいんじゃないですか?」 「そうか。ありがとよ。で、このチョコレートは本命ってヤツか?」  俺が突っ込むと、レイヴンの顔が分かりやすく真っ赤になる。  ニヤニヤ見守っていると、今度はじぃっと睨みつけてきた。 「なんでテオがそのことを知ってるのかは知りませんが、お世話になっているのでありがとうございますチョコです」 「そんな誤魔化さなくてもいいのによ。分かってるって。折角だから一緒に食べようぜ。一つか二つくらい食べても大丈夫だろ」 「言い方が腹立ちますけど……それくらいなら、たぶん」 「俺の好みを考えて手作りしてくれたんだろ? だったら俺も美味しく食べねぇとな」  律儀に手作りだなんて、レイヴンらしいよな。  別に買えば済むことだが、俺のことを考えて作ってるところが可愛らしいじゃねぇか。    レイヴンの頭を優しく撫でながら、酒瓶の形をしたチョコレートを摘まんで口へ放り込む。  ひと噛みすると、じゅわっと酒が口の中へとろけ出してくる。  俺の様子を窺っていたレイヴンの口元へチョコレートを運んでやると、素直に口を開いてもぐもぐと食べ始めた。  味は文句なく美味いな。  チョコレートと酒の組み合わせは悪くねぇとは思っていたが、これなら全部食べられそうだ。 「ん……これ、美味しい」 「だな。さすがレイちゃん。甘すぎねぇから丁度いい」  嬉しそうな顔をしているレイヴンの唇にちゅっと触れると、また赤い顔で睨まれた。  

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