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第4話

「――ッ、神代先輩!!」 「っ!?」  今正に下校の為に教室を出ようとした類の背後から冬弥の怒鳴り声が聞こえてきた。  司に背中を押され、まだ類が下校していないと聞いた冬弥は保健室から類の教室がある階まで一目散に駆け上がってきたところだった。  類は嫌われていると思っていたはずの冬弥が自分を大声で呼ぶほど切羽詰まっている状態に困惑の表情を浮かべつつも、まだ本調子では無い様子の冬弥がふらつきつつも壁沿いにやって来る姿を見て慌てて駆け寄る。 「青柳くん、体調は大丈夫かい? 無理をしないで……」  差し出された類の右手首に見えた白い包帯。冬弥は記憶を思い返すが、CD返却の時点では類は右手に包帯などは巻いていなかったはずだと考えると差し出される類の右手首を掴む。  仮にもパフォーマンスを生業にしている人間が、人を助ける為とはいえど簡単に利き手を負傷しても良いものだろうか。  ――優しい人なんだ。貴方も、司先輩と同じくらい。 「神代先輩、話が……あるんですけど。ちょっと場所移せませんか?」 「え、今?」

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